御器谷法律事務所
破産宣告後の退職金からの控除
地方公務員在職中に破産宣告を受け、その後に退職して得た退職金の4分の1が破産財団に組み入れられた際、退職金支払機関がその公務員の破産債権者である共済組合に対し、破産財団に組み入れられなかった退職金残金の一部を未返済貸付金残金の返済として払い込むことは可能か。
東京高等裁判所平成13年 5月24日判決

1.事案の概要

甲は、地方公務員として在職していた際、破産宣告を受け、その後に退職して退職金を取得した。その退職金のうち 4分の 1は破産財団に組み入れられた。退職金支払機関は、甲の破産債権者である乙共済組合に対し、破産財団に組み入れられなかった退職金残金の一部を未返済貸付金残金の返済として払い込んだ。

甲は、乙が破産債権者であるにもかかわらず甲の意思に反して破産手続きによらないで支払機関から返済を受けたもので乙の不当利得にあたると主張して返還請求訴訟を提起した。

2.判決要旨

(1) 破産法16条は、破産債権者は破産手続きによらなければその破産債権を行使することができない旨を定めており、破産債権者は、破産手続中は、その破産債権につき、破産者に対して個別的に債務の履行請求や取り立てをしたり、その自由財産に対して強制執行をすることも許されないが、破産者が新得財産又は自由財産から任意に破産債権を弁済することは破産法上禁止されておらず、破産債権者がこれを受領しても不当利得には当たらないものと解するが相当である。

(2) 本件においては、破産管財人が破産裁判所の許可を受けて破産財団に帰属していた破産宣告時の将来の退職金請求権をその 4分の 1である519万4,122円のみを破産財団に提供させることによって破産財団から放棄したというのであるから、放棄されて自由財産となった破産宣告時の退職金相当部分又は新得財産である破産宣告後の退職金相当部分に対して破産債権者が個別に強制執行をしたり、実質において個別取り立てに等しい相殺権を行使することは許されないといわざるを得ない。従って、事実上相殺権を行使するのと類似の取り立て委託及び支払委託による退職金からの償還金控除及び被控訴人への払い込みは破産法第16条の趣旨に反する。また、上記払い込み代行の委任契約は、民法653条の原則に従い、委任者である控訴人が破産宣告を受けたことによって終了したものと解するのが相当である。そのうえ本件払い込みが退職時の控訴人の意思に反していたことは明らかであるから、本件払い込みが控訴人の任意による弁済であるということはできない。

(3) 結論として控訴人(破産者)の請求を認め、原判決を取消、控訴人の請求を認容した。

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