御器谷法律事務所

精神科の患者に対し、担当医がうつ病・自殺の危険に対処する治療をしなかったことが診療契約上の義務違反となるとされた事案 −治療機会の喪失と患者の死亡

東京高等裁判所 平成13年 7月19日判決(確定)

《事案の概要》
 Aは、平成 5年 2月から平成 6年までY1病院に入院し、心因反応的症状又は神経症と診断された。また、Aは、平成 6年 9月 11日、半狂乱状態に陥ったためY2に緊急入院し、その 5時間後自殺した。
 そこで、Aの遺族(X)らが、Yらに対し、いずれも債務不履行があったとしてAの逸失利益等につき損害賠償請求をした。
 
《本判決の判断》
・Y1病院について
 心因反応的症状(ヒステリー性格等)又は神経症との診断には誤診の余地があり、そのために疾病の具体的状況に応じた「適切な治療を施す機会を失わせた可能性」があるから、Aに対する診療契約上の義務の不履行がある。
 なお、Aの自殺については、診療契約が断絶した後の事故であり、上記債務不履行との間に相当因果関係があるとはいえないが、医師が、Aの自殺の危険性を察知し、適切な治療方法等をとっていれば自殺に至らなかった可能性があり、「自殺しなかった可能性の利益を侵害された損害」につき、Aは、慰謝料請求権を有する(600万円+弁護士費用としてその 1割を認容)。
 
・Y2病院について
 Y2病院についても、A自殺の予見可能性、A自殺防止回避義務を尽くさなかったとして、債務不履行責任を肯定(但しX側の事情を斟酌し、3割の減額)。
 
《本判決の問題点》
・ 従来の判例である相当因果関係論と矛盾しないか。
・ 「適切な治療を施す機会を失わせた可能性」と「自殺しなかった可能性の侵害」とはどのような関係に立つのか。


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