御器谷法律事務所
車金融業者と不法行為
1. 所有権留保されている自動車を担保にとる行為は借り主の横領行為に荷担する不法行為となるのか、また、借り主が他の業者に担保として当該自動車を差し入れする行為に協力する行為もまた借り主の横領行為に荷担する不法行為となるのか。
2. 担保差し入れ中の価格の減少及びその後に自動車が行方不明となった場合、業者は所有者に対し、自動車の値下がり損又は価格全部の賠償義務を負うか。
平成13年10月23日東京高等裁判所判決

1. 事案の概要
甲有限会社は、自動車ディーラー乙から自動車を購入し、第一審の原告に代金を立て替え払いしてもらい、は当該自動車の所有権を留保した。
と甲社との間には、所有権留保されている間は、に無断で譲渡担保に供することはできず、これに反した場合、甲社は期限の利益を失い、本件自動車を弁済のためただちにに引き渡さなければならない旨約されていた。
は車金融業者であり「車でお金」「高価買取」「乗ったまま、ローン中でも」などの広告を出していた。
甲社は多重債務者であり、から55万借り入れ、自動車をに引き渡した。
その後、甲社は手形の決済が出来ず倒産した。
は、立替金の回収をはかるため、自動車の占有者に対して訴訟を提起した(第 1審請求)。
ところが、は甲社代表者を呼びだし、他の車金融業者から借り入れをさせることとし、該自動車を他の業者の事務所付近にはこび、該自動車を担保に金50万円の借り入れをさせ、この金員により金50万円余の返済を受けた。
該自動車は、から甲が引渡を受け、他の業者に引き渡され、行方不明となり、その業者の所在も不明となった。
そこで、は、に対し、本件自動車の価格相当額の損害賠償等を求め本訴を提起した。

2. 判決要旨
上記認定の事実によれば、甲野が本件自動車を購入するにあたって、本件自動車の所有権は第 1審原告に留保されており、甲野が本件自動車を担保に供することは禁じられていたわけである。また、本件立替払契約上、甲野が第 1審原告に無断で本件自動車を担保に供した場合、甲野は当然に期限の利益を喪失し、甲野は本件自動車を弁済のために第 1審原告に引き渡す義務を負うに至っていたのである。そうすると、甲野が、第 1審被告に本件自動車を担保に供し、これを引き渡したことは、第 1審原告の所有権を侵害する横領行為にあたり、不法行為を構成する。そして、第 1審被告は、本件自動車の所有権が第 1審原告に留保されていることや甲野に本件自動車の処分権限がないことなどの諸事情を十分に知っていたのである。しかるに、第 1審被告は、上記のとおり、甲野の横領という不法行為に積極的に荷担する行為に及んだのである。第 1審被告は、甲野の共同不法行為者というべきである。
そして、上記認定のとおり、第1審被告が占有していた本件自動車が、甲野に返還された後、乙野商事に引き渡され、その後、所在が不明となるに至ったのは、第 1審被告の甲野に対する返済要求と甲野が本件自動車を乙野商事に引き渡すことに第 1審被告が強くかかわったことに起因するのである。第 1審被告は、甲野の乙野商事からの借入金をもって自らの債権を回収するために、甲野が本件自動車を乙野商事に引き渡す横領行為をすることを知りながら、横領行為をするのに不可欠な自動車の引渡をしたものである。この横領行為に対する荷担は、第 1審原告が本件自動車の返還を求めていることを知りながらされており、故意による不法行為に該当する。
そして、第 1審被告がした上記一連の不法行為と第 1審原告が本件自動車の価値に相当する損失を被ったこととの間には、優に相当因果関係があるものと認められる。
自動車の価格は、横領行為の開始時点以降時間の経過とともに減少するが、そのような価値の減少は、横領行為によって生じたものと認められる。
そうすると、第 1審原告は、第 1審被告に対し、第1審被告による一連の横領荷担の不法行為が始まった時点であって、かつ、甲野が期限の利益を喪失した時点における価額相当額の損害賠償を求めることができるというべきである。


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