御器谷法律事務所

民法724条の「被害者が損害を知ったとき」とは、被害者が損害の発生を現実に認識したときをいう、と判断した事案 −民法724条の起算点

最高裁小法廷 平成14年 1月29日判決(破棄差戻)

《事案の概要》
 原告は、被告通信社に対し、昭和60年 9月12日、原告に関する記事(本件記事)を配信したこと及びその加盟社である被告新聞社が、その翌日、これと同じ記事を地方日刊紙に掲載したことを理由として、平成 7年 7月25日、両社に対し名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を提起したが、被告らは、以下のとおり、損害賠償請求権の消滅時効(損害を知ったときから 3年間)を主張した。
 即ち、原告は、平成 4年始めころまでには、被告新聞社が被告通信社の加盟社であることを知るに至った。また、原告は、平成 3年に、訴外A新聞社に対し、別件記事につき別件訴訟を提起していたところ、被告通信社より記事の配信を受けていたA新聞社が、被告通信社に対し、平成 4年 7月 9日、訴訟告知をしたことから、原告は、同日には、被告通信社の加盟社である本件被告新聞社にも本件記事が掲載されている可能性が高いことを知っており、「損害を知った」ものといえる。

《争点》
 少なくとも平成 4年 7月 9日の時点で、原告が「損害及び加害者を知った」(民法724条)といえるのか(被告新聞社の消滅時効の抗弁は認められるのか)。

《本判決》
 本件では、「加害者を知った」とはいえない(消滅時効不成立)。
 原審で名誉毀損の事実につき判断していないことから破棄差戻。
∵「損害及び加害者を知った」:被害者が損害及び加害者を現実に認識した時(現実認識説、通説)。←文理に忠実
 cf. 第 1審、第 2審−被害者に現実の認識が欠けていても、わずかな努力によって損害及び加害者を認識しうる状況あれば「損害及び加害者を知った」というべき。

《関連判例》
・最判昭和48年11月16日
「加害者を知りたるとき」:加害者に対する損害賠償が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知ったとき
・最判昭和49年12月17日
民法724条の立法趣旨:加害者の法的地位の安定と加害者の保護


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