御器谷法律事務所
取引相手との販売業務委託契約の解除が、独占禁止法19条あるいはその趣旨に反し、不法行為を構成するとされた事案−ノエビア化粧品事件控訴審判決
東京高等裁判所 平成14年12月 5日判決

《事案の概要》
1. Y1は、化粧品のメーカーであり、Y2、3は、その支店長及び副支店長である。
 Y1は、化粧品の連鎖販売取引システムを取っていた。
 すなわち、Y1取扱商品の販売業者は、売上に応じて二次代理店、一次代理店、販社へと昇格し、昇格に伴い、取得できる手数料率が増大し、傘下の代理店の数が増加する制度が採られていた。また、これら販社及び代理店は、Y1の子会社あるいはその一部門といえる関係にあった。

2. Xは、Y1と化粧品の委託販売を目的とする委託契約を締結し、Y1の製品を販売していた。
 しかし、Y1は、キャンペーン商品につき、(1) 各代理店ごとの割当数量を決定して販社にその旨の指示をしたり、(2) 販社の意向を無視する形でキャンペーン製品を割り当てたり(押し込み販売)また(3) 返品受け入れを事実上拒んだりした。

3. このようなY1の販売方針により、Xは、深刻な経営危機に陥り、在庫解消のためYに対し返品要求をしたところ、Yは、Xが別製品の取扱を検討していたことを利用し、その申し入れについての報復的措置として委託契約違反の証拠を採集して委託契約を解除し、Xとの取引を拒絶した。

4. そこで、Xは、Yらに対し、逸失利益の内金500万円(控訴審において内金に減額)及び慰謝料500万円、以上合計1,000万円を請求した。

《本判決の判断》
・ Y1の販売システムの問題点
 Y1が採っていたような化粧品の連鎖販売取引システムにおいて、Y1は、その販売システムが不健全な形に陥ることがないよう、その傘下の販社及び代理店に対し、いたずらにその昇格等の意欲を煽り立て、あるいはその営業実績を競うあまり無理な販売活動をするなどして、その経営基盤を危うくしたりすることのないよう指導監督していくべき責任がある。
 しかし、Y1は、キャンペーン商品につき、(1) 各代理店ごとの割当数量を決定して販社にその旨の指示をしたり、(2) 販社の意向を無視する形でキャンペーン製品を割り当てたり(押し込み販売)、また(3) 返品受け入れを事実上拒んだりした。
・ Yらの不法行為について
 Y1の化粧品販売システムに、前記のとおりの問題点があったこと、Y1は、そのような問題点を踏まえ、傘下の販社及び代理店に対し、適切な指導監督をすべき責任があったにもかかわらず、それを真摯に改善する努力をしないまま、傘下の販社及び代理店を通じての売上の拡大を図る方針を続けてきたこと、そのなかでXが深刻な経営危機に陥っていたにもかかわらず、その在庫解消策等、根本的な経営改善策を採ることもなく、さらに販売の拡大を目指してXから申し入れのあった返品要求にも応ぜず、やむなくXが返品を申し入れるや、Xが別製品の取扱を検討していたことを利用し、その申し入れについての報復的措置として、本件委託契約違反の証拠を採集して本件解除に及び、以後、Xとの取引を拒絶したものである。その結果、Xが長年培ってきた販売網は崩壊するに至った。
 このような、Y1の一連の対応は、前記のような販売システムを構築し、それに基づく販売網を有するY1会社において、その相手方であるXがY1以外に容易に取引先を見いだし得ないような事情の下に、取引の相手方の事業活動を困難に陥らせる以外に格別の理由がなく、取引を拒絶したものというべきであり、独占禁止法19条、公正取引委員会告示第15号(一般指定)2項の不当な取引拒絶に該当するおそれがあり、独占禁止法19条の不公正な取引方法に該当する可能性が高い。また、その趣旨に反する行為である。
 そして、本件解除を理由としてY1がXとの取引を拒絶したのは、違法にXの同契約上の受託者としての地位を侵害するものであり、不法行為にあたるというべきである。
(また、Y2,Y3についても、Y1の意思決定に直接関わったとして、共同不法行為の成立を認めた。)
  
→ 以上の事実から、XのYらに対する金1,000万円(逸失利益の内金500万円及び慰謝料500万円)及び遅延損害金の支払いを認めた。


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