御器谷法律事務所

盗まれた預金通帳と銀行届出印の無断使用による預金の払い戻しと銀行の免責
東京高等裁判所H14年12月17日判決

1. 事案の概要
 X1(法人格なき社団αの代表者:Y銀行四谷支店で普通預金取引)
 X2(法人格なき社団βの代表者:Y銀行四谷支店で貯蓄預金取引)
 平成11年3月、何者かによりこれら預金通帳と届出印を盗まれ、X1の口座につき四谷支店で900万円、×2の口座につき麹町支店で500万円がそれぞれ払い戻しがなされました。
 X1とX2は、預金の払い戻しは無権限者が行ったもので無効であって、銀行担当者に過失があるのだから民法478条は不適用であり、銀行は免責されないとして、Y銀行に対し合計金1400万円の預金の払い戻しを請求しました。
 第1審では、X1の請求を認容し、X2の請求を棄却したため、Y銀行とX2がそれぞれ控訴しました。

2. 結論
(1) Y銀行の本件控訴に基づき、原判決中、1審原告X1に関する部分を取り消す。
(2) X1の請求を棄却。
(3) X2の控訴を棄却。

3. 理由
 何らかの契機により、銀行の窓口で預金の払戻請求をしている者が正当な受領権限を有しないのではないかと疑わしめる事情が存在した場合には、本人か代理人であるかを尋ね、本人であれば、住所、生年月日、電話番号などの個人的情報を尋ね、場合によっては身分証明書の掲示等を求め、代理人であればその氏名、立場等を尋ね、場合によっては本人に電話するなどして、窓口に来店している請求者が正当な受領権限を有することを確認しなければならない。
 銀行員Aと銀行員Bの過失の有無を検討すると、Aについては所定の手続を行ってBに引き継いだのであるから、過失があるとはいえない。
 次に、Bについては、丙は、Bの質問に対し、X1の生年月日を答え、これが届け出られた印鑑票の生年月日と合致していたこと、資金の使途についても厚生省に持っていくと具体的に答え、特に不審な態度が見られなかったことからすれば、証印者であるBとしては、窓口に来た丙に、預金の払戻について正当な疑いを生じるような事情がなかったのであるから、Bがそのころ四谷周辺で、届出印章と通帳を盗用した者による預金の払戻事件が頻発していたことを考慮に入れても、それ以上に、窓口にきたものの氏名やX1の住所を尋ねたり、身分証明書の提示を求める義務を認めることはできない。
 以上の諸点に照らすと、証印者であるBが、丙からの払戻請求に応じたことに過失はなかったものと認められるから、丙に対する900万円の払い戻しについては、民法478条の準占有者への弁済として有効であると認められる。


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