御器谷法律事務所
株式の信用取引につき、過当取引であったとの認定をし、手数料相当額を損害額と認定した事案
東京高等裁判所 平成15年6月27日判決

《事案の概要》
1.主位的主張
 1) 被告証券会社の従業員が原告に無断で株式の信用取引を行ったことを理由とする預託金(約2353万円)の返還請求。
 2) 適合性原則違反、過当取引等による不法行為に基づく損害賠償請求権に基づく損害額の内金の賠償請求。1)2)の合計額2500万円
2.予備的主張(上記無断売買が認められない場合)
 適合性原則違反、過当取引等による不法行為に基づく損害賠償請求権に基づく損害額の内金2500万円の賠償請求

《本判決の判断》
□ (1)無断売買、(2)適合性の原則違反、(3)虚偽による勧誘・断定的判断の提供、(4)助言・情報提供義務違反、(6)誠実更正義務違反の主張については、いずれも排斥

□ (5)過当取引に対する判断
「証券会社が、顧客の取引口座に対して支配を及ぼして、顧客の信頼を濫用し、顧客の利益を犠牲にして手数料稼ぎ等の自己の利益を図るために、顧客の資産状況、投資目的、投資傾向、投資知識、経験に照らして過当な頻度、数量の証券取引の勧誘をすることは、顧客に対する誠実義務に違反するいわば背任的行為として、私法上も違法と評価すべきである。」
「原告が信用取引を開始した平成11年8月26日から、原被告間の取引が終了した平成12年9月19日までの約14か月間については、取引件数は合計119件(現物取引22件、信用取引97件)であるところ、(中略)原告はあくまでも一般投資家であって高度の投機目的を有する者ではなく、また銘柄、数量、取引の時期等を自主的、自発的に判断するための情報収集能力、分析能力を十分身につけていたとはいい難いこと、原告は、現に、信用取引開始後、被告従業員に対し、(中略)取引のペースが速くてついていけないという苦情を何度か申し入れていることからすると、原告が信用取引を開始した平成11年8月以降の取引については、原告にとっては、過度な頻度、数量の取引が行われたと評価することができる。」
「こうした事実に照らして考えると、被告従業員も原告が自らに依存して取引をしていることは十分に知悉していたものと認められる。そして、原告が信用取引を開始した後の本件取引の手数料額は合計942万4289円(現物取引165万0825円、信用取引777万3464円)と個人投資家としては相当多額にのぼっており、被告が本件取引で被った損害の少なからざる部分を占めているといえる。」
「以上の事実によれば、(中略)本件取引中、平成11年8月26日から平成12年9月19日までの間の取引は、過当取引として違法というべきである。」

□ 原告の損害に対する判断
「過当取引の違法性の本質は、証券会社が顧客の利益よりもむしろ自己の利益を優先して、過大な手数料を取得したことにあると考えられることからすると、原告が被った損害額は、過当取引が行われた期間中の取引差損全額ではなく、被告が過当取引によって取得した手数料額であると認めるのが相当である。」

《認容額》
計621万4573円及び年5%の遅延損害金
 (1) 手数料額合計 942万4289円×0.6(過失相殺4割) = 565万4573円
 (2) 弁護士費用 56万円(約1割)


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