御器谷法律事務所
売買契約の合意解除による売買代金返還請求権及び違約金請求権
留置権の成否−売買契約の合意解除による売買代金返還請求権及び違約金請求権は売買契約の目的物に関して生じた債権と言えるか。
東京高等裁判所 平成15年7月31日判決

1.事案の概要
 本件はX(原告・控訴人)が甲に対して貸金債権等を有していたところ、Xが甲から既に乙のために根抵当権等が設定されていた土地建物を買い受け、売買代金支払の一部としてその貸金債権等を充てるとともに、残代金を小切手で支払って右土地建物の引渡しを受けた後、約定の期限内に右根抵当権等が抹消されず所有権移転登記が受けられなかったことを理由に、甲との間で右売買契約を合意解除し、その後に右根抵当権の実行に基づく競売により右土地建物を取得したY(被告・被控訴人)に対し、甲に対する売買代金返還請求権及び違約金請求権をもって右土地建物についての留置権を主張し、その留置権存在の確認を求めた事案である。

2. 判決主文
 1. 本件控訴を棄却する。
 2. 控訴費用は、控訴人の負担とする。

3. 判決理由
 民法295条の留置権は、他人の物の占有者が「その物に関して生じた債権」を有する場合に成立するところ、その物自体を目的とする債権である場合には、債権者は権利の内容である行為を物に対して行使することにより直接に弁済を受けることができるものであり、目的物を留置することによりその弁済を担保する問題を生じないから、「その物に関して生じた債権」ということはできない。
 これを本件についてみると、控訴人の丁原社に対する原債権は、本件売買契約による本件土地建物の所有権移転請求権(実質は所有権移転登記請求権)であって、本件土地建物自体を目的とする債権であるから、本件土地建物の所有権移転義務の履行を直接求めることができ、本件土地建物を留置することにより間接に本件土地建物の所有権移転義務の履行を強制するという関係にはない。そして、控訴人が主張する売買代金返還請求権は、本件土地建物自体を目的とする原債権がその態様を変じたものであり、売買代金返還請求権は本件土地建物に関して生じた債権ということはできない。
 さらに、控訴人が主張する違約金請求権は、本件土地建物から生じた債権ではなく、丁原社の行為(債務不履行)によって生じた債権であるから、本件土地建物に関して生じた債権ということはできない。
 したがって、控訴人は、被控訴人に対し、本件土地建物について売買代金返還請求権及び違約金請求権を被担保債権とする留置権の成立を主張することはできないというべきであり、控訴人の同主張は失当である。


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