御器谷法律事務所

東京地方裁判所平成15年10月7日判決
院内感染 (S大学病院MRSA訴訟)

争点1 原告AがARDS、DIC、MOFに陥った原因、時期について
 本件において、原告AがARDS、DIC、さらにMOFに陥った原因については、MRSAを原因とするセプシスであり、その時期は、7月16日午後6時30分に原告Aが呼吸苦を訴え、その後、同日午後8時30分にDICに陥ったころであると認められる。
争点2 被告の義務違反の有無について
 被告病院は、遅くとも7月15日午後7時ころの段階において、MRSA感染症治療としての抗生剤バンコマイシンを原告Aに投与する義務があったというべきである。ところが、被告病院が実際にバンコマイシンを投与したのは、前記認定のとおり、7月18日午前9時30分であったのであるから、被告病院には、上記の義務違反があったというべきである。
争点3 結果回避可能性について
 7月15日午後7時ころの時点では、原告Aの状態は、MRSAを原因菌とするセプシスあるいはそれに引き続いて敗血症に陥っているにとどまっている段階であり、まだ敗血症性ショックには至っていなかったと認められるところ、上記(1)認定のとおり、敗血症に対するバンコマイシン有効率は74%から90%とされ、またショックに至らない重症敗血症に対する致死率は10%から20%にとどまるものとされていることにかんがみれば、本件において、被告病院が遅くとも7月15日午後7時ころの時点で、原告Aに対してバンコマイシンを投与していれば、原告AがARDSやDICを発症し、MOF状態となり、心停止により低酸素脳症に陥るという本件結果を回避することができた高度の蓋然性が認められるというできである。
まとめ 被告病院には、遅くとも7月15日午後7時ころからMRSA感染症治療として抗生剤バンコマイシンを原告Aに投与すべき義務があったにもかかわらずそれを怠った過失があり、その結果、原告Aに心停止という結果が生じたと認められるから、被告病院を経営する被告には、不法行為が成立するものと解される。


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