御器谷法律事務所
第三債務者が、債務者に対する債務支払のために債務者の指定する銀行口座への振替送金を金融機関に依頼した後に債権仮差押命令の送達を受けた場合には、その後に金融機関による債務者への送金手続がされたとしても、特段の事情がない限り、債務の消滅を仮差押債権者に対抗することができるとされた事例
東京高等裁判所 平成15年10月22日判決

1. 事案の概要
 被告は、平成一三年一二月二六日、同月三一日を弁済期とする甲に対する退職金債務(本件退職金債務)につき、取引銀行に対し、同月二八日に甲の指定する銀行口座に振替送金するよう依頼した。被告は、同月二七日、原告が本件退職金債務について申し立てた債権仮差押命令につき、第三債務者として送達を受けたが、右送金依頼を撤回しなかった。同月二八日、右取引銀行により、被告の口座から甲の指定する銀行口座への送金手続がされた。
 その後、原告は、本件退職金債務を差し押さえ(仮差押えの本差押えへの移行)、取立権に基づいて、第三債務者である被告に本件退職金債務の支払を求め(本件訴訟)、被告は、本件退職金債務は、弁済により消滅したと主張して争った。

2. 判決要旨
 本件における従業員の給与に限らず、一定の時期に大量に金銭債務を弁済する場合、個別的に現金を振り分けることに伴う労力を節約し、かつ生じうる過誤をも防止し、正確で確実な弁済を期することをも目的として、現在、金融機関を通じた振込手続が信頼性の高い決済手段として広く利用されており(公知の事実である。)、この手続を利用する債権者及び債務者とも、振込依頼手続を完了すれば、依頼内容に従った振込みが金融機関によって実行され、有効な弁済がされることが確実であると信頼するに至っていると推認しうることにかんがみると、第三債務者が、金融機関に対し、債務の本旨に従った弁済をするために、差押債務者が指定した口座への振込みを依頼した後に、差押命令(仮差押命令についても同じ。)の送達を受けた場合、弁済期までに長い期間がある時期に振込依頼がされたなどの特段の事情がない限り、第三債務者の依頼に基づいて金融機関がした差押債務者に対する送金手続が差押命令の第三債務者への送達後にされたとしても、第三債務者の上記振込依頼に基づく弁済をもって差押債権者に対抗することができると解するのが相当である。


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