御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成16年 4月15日判決(控訴)
 継続的商品供給契約の解約について、独占禁止法上の請求は棄却したものの、一般民事上の請求のうち、既存契約に基づく契約上の地位が認められた事案

《事案の概要》
 本件は、被告において、被告から家庭用配置薬の仕入をしている配置販売業者である原告らに対し、既存の商品供給契約に代えて、その顧客台帳(いわゆる懸場帳)上の情報を提供すること、原告らの営業活動範囲についての地域指定をして制限すること及び得意先の譲渡を制限することを内容とする商品供給契約の締結を求めたところ、原告らがこれに応じなかったため既存の商品供給契約を解約したことから、原告らが被告に対し、既存の商品供給契約の有効な存在を前提として、(1)前記解約について、独占禁止法二条九項に基づく不公正な取引方法(一般指定)二項にいう単独の取引拒絶にあたるとして、前記解約に伴う商品の出荷停止の禁止及び必要数量の商品の引渡しを独占禁止法二四条の差止請求として求めるとともに、(2)前記解約の効力を争い、原告らの既存の商品供給契約上の地位を確認のうえ、原告らの注文に応じた売買契約の承諾意思表示をなすこと及び必要数量の商品の引渡しを求めた事案である。

《原告らの主張》
 原告らは、(1) 本件出荷停止の措置は、被告が原告らが新取引規定の締結に応じないことを理由として行ったものであるところ、本件出荷停止は、独占禁止法上違法とされる単独の取引拒絶に該当すると主張し、その理由として次のように述べている。すなわち、(ア)新取引規定中の地域制限条項は、被告が市場における有力な事業者であり、原告らに対する事業活動の制限が認められ、価額維持効果も存することからすると厳格な地域制限に該当する、(イ)新取引規定中の地域制限条項は、独占禁止法上違法とされる地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)に該当する、(ウ)被告はS丸の取引に関し原告らに対し優越的な地位にあるところ、本件顧客情報の提供は、配置業者としての財産を無償で提供することにほかならず、得意先のプライバシーを侵害する点で、また、原告らの競争相手である配置研修部に本件顧客情報を提供することにもなることから、原告らに不利益を与えるものであり、被告の行為は優越的な地位の濫用にあたるなどと主張するものである。
 また、原告らは、(2)本件解約の民法上の効力につき、被告の本件解約申入れの前提となった本件新規契約の締結の申入れはその内容に照らして不合理であり、本件解約は効力を生じない(なお、原告乙原については乙原新契約の締結は強迫によるものでありこれを取り消す)と主張する。

《裁判所の判断》
 当裁判所は、(1)の独占禁止法違反の点については、新取引規定中の地域制限条項は、厳格な地域制限や地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)に該当しないし、被告が原告らとの関係で優越的な地位にあることは認められるが、本件新規契約の締結の申入れにつき原告らの主張するような不利益は認められないとしていずれも理由がないものと判断した。また、(2)の民法上の本件解約の効力に関しては、本件既存契約のような継続的商品供給契約を解約するについては、解約申入れ自体に信義則に反しない程度の相当ないし合理的な理由が存在することと相手方の取引上の利益に配慮した相当期間の猶予が必要であると解したうえで、本件解約申入れについては、一応の合理性が認められるが、原告甲野本店を除く原告らについては、相手方の取引上の利益に配慮した相当期間が経過していない(なお、傍論ではあるものの、原告らのなかには、相当期間が10年程度であるとも判示)として、本件解約は効力を生じないものと判断した。

《結論》
 以上の判断を踏まえ、本判決では、原告甲野本店及び原告乙原を除くその余の原告らについては、本件既存契約(ただし、その内容については原告らの主張のとおりではなく別紙契約目録三記載のとおり。)に基づく契約上の地位があることを確認したものである。
 なお、請求の趣旨との関係では、(1)独占禁止法二四条に基づきS丸の引渡しを求める部分については、独占禁止法二四条は直接的な作為義務を課すことまでは認めていないと解してこれを不適法と判断した。また、(2)一般民事上の請求のうちS丸の注文についての承諾を求める部分及びS丸の引渡請求を求める部分については、いずれもその必要性が認められないから不適法と判断した。


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