御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成16年6月2日判決(確定)
賃貸借契約解除後の賃貸人による建物の鍵の交換が違法な自力救済として不法行為に該当するとされた事案(但し損害賠償請求については立証なしとして棄却)。

《事案の概要》
原告(賃借人) 平成11年5月分・6月分の賃料未払
被告(賃貸人) →原告 H11.6.1 H11.6.4まで未払賃料等の支払がなければ賃貸借契約を解除する旨の意思表示、また、入金がないときは事務室の鍵を変更する旨も通知(H16.6.2到達)
被告 H11.6.8  建物の鍵を交換

このため、本件建物が利用できなかったことによる損害を被ったとして、原告が被告に対し、2600万円及び遅延損害金の支払を求め、保証金510万6566円の支払を求めた事案。

《裁判所の判断》
 本件賃貸借契約は、本件解除通知及び平成11年6月4日の経過によって、原告の債務不履行(賃料等不払)を理由とする解除により終了したものと認められ、原告は、本件鍵交換当時、本件賃貸借契約に基づく使用収益権限を失い、被告に対し、賃貸借契約終了に伴う目的物返還債務を負うに至ったものと認められる。
 しかしながら、原告が、本件建物に対する占有権を有していたことは論を俟たないところ、前記認定のとおり、本件鍵交換は、被告において、原告の実質的経営者である太郎が身柄拘束中であり、本件建物明渡の要否について判断することが困難な状況にあることを了知した上でなされたものであり、本件解除通知において予告されていたものの、本件解除通知到着から僅か6日後に事前に具体的な日時の指定をなすことなく、本件建物内の動産類の持ち出しの機会を与えることなく、たまたま居合わせた原告の関係会社の従業員を立ち合わせて行われたものであり、前後の経過に照らせば、原告代表者がこれを事前事後において、承諾ないし容認したものと認められないことからすると、本件鍵交換は、未払賃料債務等の履行を促すために行われた、原告の占有権を侵害する自力救済に当たるものと認めるのが相当である。そして、自力救済は、原則として法の禁止するところであり、ただ、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合において、その必要の限度を越えない範囲内でのみ例外的に許されるにすぎない(最判昭和40年12月7日民集19巻9号2101頁)。(中略)したがって、本件鍵交換は違法な自力救済に当たり、不法行為が成立するものと認められる。

《結論》
 但し、損害賠償請求については、本件鍵交換によって生じた損害に当たることを認めるに足りる証拠がない、保証金返還請求についても、相殺によって消滅したか控除によって発生しなかった、として請求棄却


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