御器谷法律事務所

破産宣告後の取締役と保険免責約款
最高裁判所 平成16年6月10日判決

1 判示事項
 有限会社の破産宣告当時の取締役が、破産宣告を受けた後であっても、火災保険契約約款の免責条項所定の「取締役」に当たるとされた事例

2 事案の概要
 保険会社との間で火災保険契約を締結していた有限会社が破産宣告を受けた後、その有限会社の取締役の地位にあった者が、保険の目的である建物に放火したところ、有限会社に貸付債権を有し、その建物の保険金請求権に質権を設定していた質権者が保険会社に対し保険金を請求した事案

3 第一審、原審の判断
 第一審(大阪地方裁判所 平成9年1月20日判決)は、有限会社が破産宣告を受け破産管財人が選任されたとしても、破産宣告を受けた有限会社の取締役は、財産管理処分以外の点では、依然「取締役」たる地位にあるから、本件放火は本件免責条項における「取締役」の故意による事故招致に当たるとしました。
 これに対し、原審(大阪高等裁判所 平成11年9月30日判決)は、保険契約の当事者の意思解釈により従前の取締役は、本件免責条項に規定する取締役に該当しないと判断しました。

4 最高裁判例の抜粋
 「本件免責条項が,上記のとおり,保険契約者又は被保険者が法人である場合における免責の対象となる保険事故の招致をした者の範囲を明確かつ画一的に定めていること等にかんがみると,本件免責条項にいう「取締役」の意義については,文字どおり,取締役の地位にある者をいうものと解すべきである。そして,有限会社の破産宣告当時に取締役の地位にあった者は,破産宣告によっては取締役の地位を当然には失わず,社員総会の招集等の会社組織に係る行為等については,取締役としての権限を行使し得ると解されるから,上記「取締役」に該当すると解するのが相当である(なお,最高裁昭和42年(オ)第124号同43年3月15日第二小法廷判決・民集22巻3号625頁は,株式会社が破産宣告とともに同時破産廃止の決定を受けた場合において,従前の取締役が当然に清算人となるものではないことを判示したもので,本件とは事案を異にする。)。
 このような見地に立って本件をみるに,前記のとおり,本件火災は,本件保険契約の保険契約者である訴外会社の取締役の地位にあったCの放火によるものであり,当時,訴外会社は破産宣告を受けて破産管財人が選任されていたが,Cは,依然として,取締役の地位にあったのであるから,Cの放火による本件建物の焼失は,本件免責条項にいう取締役の故意による事故招致に該当するものというべきである。」


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