御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成16年9月16日判決(請求棄却、控訴)
盗難株券の買い受けについて、善意取得が否定された事案

《事実経過》
1.  ― Y1−Y4  本件各株券を所有
2. H14.4.2ころ 上記株券が窃取される
3. H14.4.9-
X: 上記株券を訴外Bの仲介により、訴外Aより買い受けた
X: 上記株券を証券会社を通じて売却したものの、事故株券であるとして買戻しを求められ、それに応じて買戻しを行った
4. H15.2- 上記株券について除権判決言渡しにより、原告は同株券の原本を発行会社(Y5−Y10)に還付した

《事案の概要》
 原告(X)が、本件各株券を善意取得したとして、原告が取得する直前にこれを所有していた被告ら(Y1−Y4)及びこれを発行している株式会社ら(Y5−Y10)に対し、本件各株券がそれぞれ原告の所有に属することの確認を求めた事案。

《裁判所の判断》
 「第1回取引及び第2回取引は、相手方が初対面の人物であり、しかも取引を急いでおり、自らの手で証券会社に持ち込めば、時価に相当する金額を容易にしかも短期間で取得できるにもかかわらず、あえて大幅な減額をし、自らにとって不利な条件での取引を甘受していることが明らかであり、このような事実関係のもとでは、金融業者としての登録もしている原告としては、本件各株券の真の所有者が誰であるのかについて疑念を抱くのが当然というべきである。そして、原告としては、前記認定のとおり過去に盗難株券を扱った経験もあることからすると取引を持ち込んだ売主の身元について勤務先に連絡する等して調査するほか、特に、売主に対し、第1回取引の対象となった株券の名義人あるいは第2回取引の対象となった株券の名義人と売主の関係等、株券の真の所有者が誰であるかについて確認し、さらには証券会社に持ち込んで換金していたのでは間に合わない切迫した状況等、何故取引を急ぐのかといった資金調達の理由についても確認するなどし、本件各株券の権利関係について原告として一応納得できる説明を受けたうえで取引を行うべきであったというべきである。
 ところが、(7)売主の身元確認については、原告は当初は訴外B(仲介者)に対し売主(訴外A)の身元を確認するようにと指示したにもかかわらず、売主の名刺を受け取ったのみで、それ以外には、自らあるいは仲介した訴外Bを通じて、売主の身元確認を一切行なっていない。また、(8)第1回取引の際に、当初売主から、売主の顧客が融資を求めており株券を担保に融資をしてほしいとの説明を受けたにもかかわらず、売主あるいはその顧客と株券の名義人の関係等株券の所有関係について自らあるいは訴外Bを通じて一切確認しなかったばかりか、その後の第2回取引に至るも、株券の名義人との関係等株券の真の所有者が誰であるかについては一切確認をとっていない。さらに、(9)前記のとおり、本件各取引は、通常であれば売主側にとっては割に合わない取引であることが明らかであるにもかかわらず、売主あるいは顧客が証券会社に持ち込んで換金していたのでは間に合わない切迫した状況等、何故資金調達を急ぐのかといった理由についても一切説明を求めようとしていないのである。
 そうであるとすれば、上記(7)ないし(9)の事実関係に照らすと、副業とはいえ、金融業者としての登録もしたうえで貸金業を営んでいた原告としては、本件のような極めて異常な取引についてみる限り、金融業者として通常行なうべき調査確認義務を怠ったものといわざるを得ないものである。そして、これらの調査確認は、原告において容易に行うことができたものであり、その懈怠の程度に照らしても、これらの調査や確認を怠ったまま、原告が、本件各株券の売買を行った点については、原告に「重大ナル過失」(注 商法229条、小切手法21条)があったというべきである。」


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