御器谷法律事務所
インクタンクの再利用につき、特許権に基づく差止請求が棄却された事案
東京地方裁判所 平成16年12月8日判決

 本件は、インクジェットプリンタ用のインクタンクに関し特許権を有する原告が、上記特許権の実施品である原告製品の使用済み品を利用して製品化された被告製品を輸入する被告に対し、上記特許権に基づき、製品の輸入、販売等の差止め及び廃棄を求めたのに対し、被告が特許権の消尽等を主張してこれを争った事案である。
 リサイクル品について、新たな生産か、それに達しない修理の範囲内かの判断は、特許製品の機能、構造、材質、用途などの客観的な性質、特許発明の内容、特許製品の通常の使用形態、加えられた加工の程度、取引の実情等を総合考慮して判断すべきである。
 原告は、本件インクタンクをインクの再充填を行わないものとして設計しており、本件インクタンクには、再充填を可能とする注入孔は設けられていない。そのため、本件インクタンク本体にインクを再充填しようとすると、本件インクタンク本体に穴を開け、内部を洗浄し、インクを注入後、穴に栓をするという方法を採らざるを得ない。
 本件インクタンク本体は、インクを使い切った後も破損等がなく、インク収納容器として十分再利用することが可能であり、消耗品であるインクに比し耐用期間が長い関係にある。この点は、撮影後にフィルムを取り出し、新たなフィルムを装填すると、裏カバーと本体との間のフック、超音波溶着部分等が破壊されてしまう使い捨てカメラ事件判決の事案とは大きく異なっている。
 そして、液体収納室の上面に注入孔を開ければ、インクの再充填が可能である。
 インクの変質等に起因する障害を防止する観点からは、原告指摘のとおり本件インクタンク本体を再利用しないことが最良であるが、上記障害が有意なものであることの立証はないし、純正品を使うかリサイクル品を使うかは、本来プリンタの所有者がプリンタやインクタンクの価格との兼ね合いを考慮して決定すべき事項である。
 以上の事実によれば、本件インクタンク本体にインクを再充填して被告製品としたことが新たな生産に当たると認めることはできないから、日本で譲渡された原告製品に基づく被告製品につき、国際消尽の成立が認められる。
 また、前記(2)及び(3)アの事実によれば、海外で譲渡された原告製品に基づく被告製品についても、国際消尽の成立が認められる。

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