御器谷法律事務所

最高裁判所 平成17年7月11日判決
固定資産評価審査決定取消請求事件

  1. 判決要旨
    固定資産評価審査委員会の認定した土地の価格が裁判所の認定した当該土地の価格を上回っていることを理由として審査決定を取り消す場合の取消し範囲につき、当該審査決定のうち裁判所の認定した価格を超える部分を取り消せば足りるとした事例。

     
  2. 事案の概要
    土地の所有者が、土地課税台帳に登録された平成6年度の登録価格を不服として、地方税法(平成11年法律第15号による改正前のもの)432条1項に基づき、東京都固定資産評価審査委員会に対し審査の申出をしたところ、東京都固定資産評価審査委員会が審査の申出を却下したので(本件決定)、土地の所有者が本件決定は違法であるとして、主位的に本件決定の全部取消しを、予備的に平成5年度の価格を超える部分の一部取消しを求めた。

  3. 第一審、原審
    全部取消説を採用

  4. 最高裁判決抜粋 − 一部取消説を採用
    1. 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
      (1) 地方税法349条1項は、土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を、当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳(以下、両者を併せて「土地課税台帳等」という。)に登録されたものとする旨規定し、同項にいう価格について、地方税法(平成11年法律第15号による改正前のもの)341条5号は、適正な時価をいうと規定している。平成6年度は上記の基準年度であり、これに係る賦課期日は、地方税法359条の規定により平成6年1月1日である。また、地方税法(平成11年法律第160号による改正前のもの)403条1項は、固定資産の価格は自治大臣が定める固定資産評価基準(以下「評価基準」という。)によって決定しなければならない旨規定している。
      (2) 被上告人は、第1審判決別紙目録1ないし9記載の各土地(以下「本件各土地」といい、個別の土地をいうときは、同目録の番号により「本件土地1」、「本件土地2」などという。)の所有者であって、本件各土地の固定資産税の納税者である。
      (3) 東京都知事は、本件各土地の平成6年度の価格を次のとおり決定し、これらの価格が土地課税台帳に登録された。
       ア 本件土地1 1億7910万2410円
       イ 本件土地2 1億2708万5320円
       ウ 本件土地3   8932万6290円
       エ 本件土地4   7890万1450円
       オ 本件土地5 1億0109万3830円
       カ 本件土地6 4億6746万6800円
       キ 本件土地7 2億8248万2570円
       ク 本件土地8 1億4382万3030円
       ケ 本件土地9 1億5414万7840円
      (4) 被上告人は、上記(3)の価格を不服として、上告人に対し、地方税法(平成11年法律第15号による改正前のもの)432条1項に基づき、審査の申出をしたところ、上告人は、平成8年9月18日付けで、本件土地9の価格を1億3873万3050円と減額するほかは、被上告人の審査の申出を棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。
      (5) 本件土地2ないし6の平成6年1月1日における客観的な交換価値は、次のとおりである。
       ア 本件土地2 1億2299万7880円
       イ 本件土地3    8619万2040円
       ウ 本件土地4    7613万2980円
       エ 本件土地5    9754万6680円
       オ 本件土地6 4億5106万4460円

    2. 本件は、被上告人が、本件決定が違法であるとして、主位的に、本件決定の全部の取消しを求めるとともに、予備的に、本件決定のうち本件各土地の土地課税台帳に登録された平成5年度の価格を超える部分の取消しを求める事案である。

    3. 原審は、前記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、本件土地2ないし6に係る本件決定の全部を取り消すべきものとした。
      (1) 本件決定は、本件土地2ないし6について、平成6年度の固定資産税の賦課期日における適正な時価である客観的な交換価値を上回る価格を認定した点において、違法というべきである。
      (2) 固定資産評価審査委員会の不服審査において判断される土地の価格は、基準年度に係る賦課期日における当該土地の適正な時価という一個の評価的事実であるから、地方税法は、この価格を可分なものであるとして、審査の申出に対する固定資産評価審査委員会の決定(以下「審査決定」という。)の一部のみを取り消すことを予定していない。したがって、上記(1)の違法がある本件土地2ないし6に係る本件決定については、その全部を取り消すべきである。

    4. しかしながら、原審の上記3の(2)の判断は、是認することができない。その理由は、次のとおりである。
      土地課税台帳等に登録された基準年度の土地の価格についての審査決定の取消訴訟においては、審査決定の実体上の適法要件として、固定資産評価審査委員会の認定した価格が基準年度に係る賦課期日における当該土地の適正な時価又は評価基準によって決定される価格(以下、両者を併せて「適正な時価等」という。)を上回るものでないかどうかが、審理され、判断される(最高裁平成10年(行ヒ)第41号同15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁参照)。このように審査決定の取消訴訟においては固定資産評価審査委員会の認定した価格の適否が問題となるところ、裁判所が、審理の結果、基準年度に係る賦課期日における当該土地の適正な時価等を認定した場合には、当該審査決定が金額的にどの限度で違法となるかを特定することができるのである。そして、上記の場合には、当該審査決定の全部を取り消すのではなく、当該審査決定のうち裁判所が認定した適正な時価等を超える部分に限りこれを取り消すこととしても何ら不都合はなく、むしろ、このような審査決定の一部を取り消す判決をする方が、当該土地の価格をめぐる紛争を早期に解決することができるものである。
      そうであるとすれば、土地課税台帳等に登録された基準年度の土地の価格についての審査決定の取消訴訟において、裁判所が、審理の結果、基準年度に係る賦課期日における当該土地の適正な時価等を認定し、固定資産評価審査委員会の認定した価格がその適正な時価等を上回っていることを理由として、審査決定を取り消す場合には、納税者が、審査決定の全部の取消しを求めているか、その一部の取消しを求めているかにかかわらず、当該審査決定のうちその適正な時価等を超える部分に限りこれを取り消せば足りるものというべきである。
      これを本件についてみると、原審は、本件土地2ないし6について、平成6年度の賦課期日における適正な時価である客観的な交換価値を認定し、上記各土地に係る本件決定はその適正な時価を上回る価格を認定した点に違法があるとしているのであるから、上記決定のうちその適正な時価を超える部分に限りこれを取り消せば足りるものというべきである。

    5. 以上によれば、本件土地2ないし6に係る本件決定の全部を取り消すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、論旨は理由がある。
      その余の上告受理申立て理由は、上告受理の決定において排除された。
      そうすると、本件土地2ないし6に係る本件決定の取消しを求める被上告人の請求については、上記決定のうち平成6年度の賦課期日における上記各土地の適正な時価である別紙記載の価格を超える部分の取消しを求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。これと異なる原判決は主文のとおり変更すべきである。
      よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

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