御器谷法律事務所
最高裁判所 平成17年7月15日小法廷判決
第三者異議の訴えの原告についての法人格否認の法理の適用があることを認めた事例

《事案の概要》
 Yらは、A社が開場した本件ゴルフ場に設けられた本件ゴルフクラブに入会し、それぞれ1200万円の会員資格保証金を預託していたものである。Yらは、入会契約で定められた据置期間が経過した後、本件ゴルフクラブを退会して、預託金の返還を求める訴えを提起し、勝訴判決を得、これを債務名義として、動産執行を申し立てた。執行官は、Yらの申立に基づき、本件ゴルフ場において、現金、芝刈り機等の動産を差し押さえた。
 Xは「A社の関連会社であるB社から本件ゴルフ場の運営業務を委託されており、差押えに係る物件はこの契約に基づく運営業務の一環としてXが本件ゴルフ場において所有又は占有しているものである。」旨の主張をして、Yらに対し、強制執行の不許を求める第三者異議の訴えを提起した。

《第三者異議の訴えとは》
 第三者異議の訴えとは、第三者が、強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引き渡しを妨げる権利を有する場合、かかる第三者が当該目的物に対する強制執行の排除を求める訴えのことである(民事執行法38条)。

《本判決の判断》
 甲会社がその債務を免れるために乙会社の法人格を濫用している場合には、法人格否認の法理により、両会社は、その取引の相手方に対し、両会社が別個の法人格であることを主張することができず、相手方は、両会社のいずれに対してもその債務について履行を求めることができるが、判決の既判力及び執行力の範囲については法人格否認の法理を適用して判決に当事者として表示されていない会社にまでこれを拡張することは許されない(最高裁S44.2.27判決、S48.10.26判決他)。
 ところで、第三者異議の訴えは、債務名義の執行力が原告に及ばないことを異議事由として強制執行の排除を求めるものではなく、執行債務者に対して適法に開始された強制執行の目的物について原告が所有権その他目的物の譲渡または引き渡しを妨げる権利を有するなど強制執行による侵害を受忍すべき地位にないことを異議事由として強制執行の排除を求めるものである。
 そうすると、第三者異議の訴えについて、法人格否認の法理の適用を排除すべき理由はなく、原告の法人格が執行債務者に対する強制執行を回避するために濫用されている場合には、原告は、執行債務者と別個の法人格であることを主張して強制執行の不許を求めることは許されないというべきである。
 
主文:本件上告を棄却する。
   上告費用は上告人の負担とする。


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