御器谷法律事務所
  
  ゆうパック差止請求訴訟

日本郵政公社が行うゆうパック事業につき、ヤマト運輸が「不当廉売」及び「不当な顧客誘引」を理由として提起した独禁法第24条に基づく差止請求が棄却された事例
東京地方裁判所 平成18年1月19日判決

「不当廉売」について
「したがって、営業原価のみならず、販売費及び一般管理費も「その供給に必要な費用」であることは明らかであるところ、商品又は役務が、営業原価に、これらの販売費及び一般管理費を加えた総販売原価を上回る対価で供給されれば、事業者の効率性によって達成した対価以上の対価で供給しているとみることができるのに対し、商品又は役務が総販売原価を下回る対価で供給されているとすれば、事業者としては、採算を度外視した対価で供給しているとみることができるから、上記の「供給に要する費用」とは、営業原価に販売費及び一般管理費を加えた総販売原価を意味すると考えるのが相当である。」
「本件においては、一般小包郵便物(ゆうパック)における総販売原価については、どのような項目で構成され、その額がいくらであり、その総額がいくらになるかについて具体的な主張、立証はない。」
「原告の料金との比較から直ちに被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系による役務の供給が「供給に要する費用」を下回ると推認することはできない。」
「以上のとおり、本件においては、一般小包郵便物(ゆうパック)における総販売原価については、どのような項目で構成され、その額がいくらであり、その総額がいくらになるかについて、具体的な主張、立証がされていないうえ、原告の主張する各事由を個別に検討しても、被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の役務が一般指定六項前段の「その供給に要する費用を・・・下回る対価」で供給されているという事実を認めることは困難である。」
「一般指定六項の「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」とは、他の事業者の事業活動を困難にさせる結果が招来される蓋然性が認められる場合を指すと解されるところ、他の事業者の事業活動を困難にさせる結果を招来させる蓋然性が認められるか否かは、不当廉売の規制の趣旨が公正な競争秩序を維持することにあることからして、(1)廉売を行っているとされる事業者の事業の規模及び態様、(2)廉売とされている役務又は商品の性質、その供給の数量及び期間、方法、(3)廉売によって影響を受けるとされる他の事業者の事業の規模及び態様等を総合的に考慮して判断するのが相当である。」
「以上のとおり、被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の事業の規模に比べ、原告の宅急便の事業規模が大きいこと、原告の平均単価が被告及び他の競争事業者と比較して高額であるにもかかわらず、最大のシェアを維持していること、宅急便の物流事業においては、価格の高低のみならず、配達時間の短さや配達の正確性その他のサービスによって需要が左右される傾向が見受けられること、原告は、被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の供給を開始した平成一六年一〇月以降も、各種のサービスの改善等の営業努力によって、宅急便の単価を減少させる一方で、売上及び収益を増やしており、原告自身、そのような傾向は今後も続くものと予想していることなどが認められ、これらの事情を総合的に勘案すると、被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の供給によって、原告の事業活動を困難にさせるおそれが存在すると認めることは困難である。」

「不当な顧客誘引」について
「このような行為が不公正な取引として規制されているのは、顧客の勧誘は、競争の本質的な要素であり、それ自体は非難されるものではないけれども、本来的な取引対象である商品又は役務以外の経済上の利益を提供することにより顧客を誘引する不公正な競争手段が用いられると、商品又は役務の価格や品質による本来の能率競争が行われないおそれがあるばかりか、消費者による適正な商品又は役務の選択が歪められるおそれがあり、公正かつ自由な競争が阻害されるからであると考えられるから、一般指定九項の「不当な利益」とは、経済上の利益をいうと解すべきである。」
「以上によれば、被告が株式会社ローソンに対し不当な利益を提供しているとは認められないから、その余の争点について判断するまでもなく、被告が一般指定九項所定の不公正な取引方法に当たる行為を行っていると認めることはできない。」


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