御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成18年3月24日判決(確定)
譲渡会社の屋号を商号として続用した会社に対し、旧商法26条1項の類推適用は否定したものの、詐害行為取消権に基づく請求を一部認めた事案

《事案の概要》
H12.9以降 X→ A: ヌギートレーディング(株) 合計1208万円余貸付
(屋号:ザ・クロゼット)
H14.1 A→ Y 屋号:ザ・クロゼットで行っていた営業を譲渡
Y社屋号を商号として続用
X→ Y Aに対する1208万円余貸付金をY社に対して請求
∵商法§26T類推適用

《主文》
  1. ヌギートレーディング株式会社と被告との間の、ヌギートレーディング株式会社が「ザ・クロゼット」の屋号で行っていた「紳士、婦人服及び洋品雑貨の販売」の営業についての、平成14年1月31日付営業譲渡契約を取り消す。
  2. 被告は、原告に対し、658万4459円及びこれに対する平成14年6月12日から支払済みまで年18パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
  3. 原告のその余の請求を棄却する。
 (4. 以下省略)

《争点》
(1) 被告は、旧商法26条1項(現行商法17条1項)の類推適用により、訴外会社が原告に対し負担する本件確定債権について、弁済の責を負うか否か。
(2) 本件営業譲渡は詐害行為に該当するか。

《裁判所の判断》
  1.  1 争点(1)について:否定
    「 原告は、本件営業譲渡について、商法26条1項の類推適用を認めるべきであると主張し、東京地方裁判所昭和54年7月19日の判決(判例時報946号110頁)、東京高等裁判所昭和60年5月30日の判決(判例時報1156号146頁)、東京高等裁判所平成元年11月29日の判決(東京高等裁判所民事判決時報40巻9-12合併号124頁)を引用する。
     そこで検討するに、これらの判決例は、営業譲渡に伴い続用されるものが、商号そのものではなく屋号である場合でも、その屋号が商号の重要な構成部分を内容としているときには、営業譲渡人の債権者にとっては、商号の続用の場合と同様、営業主体の交代を知ることができないため、または、その事実を知っていたとしても、譲受人が当然に債務も引き受けたと考えがちなために、商法26条1項を類推適用して、譲渡人の債権者を保護することを相当としたものである。本件は、これらの判決例とは異なり、譲渡人である訴外会社の商号は「ヌギートレーディング株式会社」であり、屋号は「ザ・クロゼット」であるから、屋号が商号の重要な構成部分を内容としているとの要件を充足しないことは明らかである。よって、原告が引用する判決例のように、商法26条1項を類推適用して、被告の弁済責任を肯定することはできない。また、屋号が譲渡会社の商号とは全く別個に存在する場合において、屋号の続用だけをもって商法26条1項を類推適用することは、文理解釈上、懸隔があり過ぎるといわざるを得ない。よって、原告の主張を採用することはできない。」

  2. 争点(2)について:肯定
    「 (1)訴外会社の第22期決算報告書(平成13年2月1日から平成14年1月31日)の貸借対照表によれば、平成14年1月31日現在で、資産の部に、商品として2億3641万6143円が計上され、資本の部には当期未処分利益として7328万5565円が計上されていた。ところが、訴外会社の第23期決算報告書(平成14年2月1日から平成15年1月31日)の貸借対照表によれば、前年の資産の部に計上されていた商品は全く存在しなくなり、未処理損失として1億4104万5202円が計上されるに至ったことが認められる。
     他方、訴外会社と被告との営業譲渡に伴い、平成14年1月31日現在、訴外会社の貸借対照表において2億3641万6143円と計上されていた商品を、訴外会社は、被告に対し、9887万4102円(税込みでは1億0381万7794円)で売却したことは明らかであり、したがって、この売買の結果、1億3750万円程度の損失が発生し、これを主たる原因の一つとして、訴外会社が債務超過に陥ったことが認められる。このように多額の損失を発生させる廉価売買がなされたことは、訴外会社も上記決算報告書を作成している以上、知悉していたことが認められ、訴外会社に害意があったことが認定できる。」
     
      として、主文のとおり詐害行為(平成14年1月の営業譲渡)前*の貸付債権残額(658万円余)につき請求を認容
    *最高裁判所昭和55年1月24日判決参照


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