御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成18年5月24日判決

退職後2年間の競業禁止を有効として、差止めの仮処分を認容した
  1. 当事者
     債権者−PM(プロジェクトマネジメント)の講座を提供する会社
     債務者−平成15年1月に入社、平成18年1月に退職

  2. 主文の概要(一部のみ)−略記
    (1) 債務者は、債権者におけるPMの教育業務に関する教材及びその電子データの全部又は一部を第三者に開示及び提供してはならない。
    (2) 債務者は、平成20年1月8日を経過するまで、別紙記載の会社に対し、PMの教育業務及びコンサルティング業務に関する自己又は第三者の営業又は勧誘のため接触してはならない。
    (3) 債務者は、平成20年1月8日を経過するまで、自ら又は第三者のために、PMの教育業務及びコンサルティング業務を行ってはならない。

  3. 判旨
    本件競業禁止条項の有効性の存否について

    ア 判断基準
     会社が、労働者を雇用するに際し、比較的高度な情報に接する部署に勤務させる労働者との間で、退職後の競業を禁止する旨の合意をすることは世上よく見られる出来事である。このような競業禁止条項を締結する目的は、当該労働者が退職後に会社の顧客を奪うことを防止する点に狙いがあり、利益を追求することを目的とする会社にとっては、必要な防衛手段といえよう。しかし、競業禁止条項を設けることは、労働者の職業選択の自由を奪うことにつながることから、競業禁止条項を無制限に認めることはできず、無制限に認める競業禁止条項は、公序良俗に反し、無効というべきである。結局、競業禁止条項が合理的な内容であれば、その範囲内でかかる条項の内容は有効と考えるのが相当であり、また、合理的内容であるか否かを判断するに当たっては、(1)競業禁止条項制定の目的、(2)労働者の従前の地位、(3)競業禁止の期間、地域、職種、(4)競業禁止に対する代償措置等を総合的に考慮し、労働者の職業選択の自由を不当に制約する結果となっているかどうか等に照らし判断するのが相当と考える。以下、上記のような判断基準に照らし、本件競業禁止条項が有効か否かについて判断することにする。

     以上イないしオによれば、(1)競業禁止条項制定の目的は債権者の教材等の内容やノウハウを保持し、他の競業業者の手に渡らないようにすることにあり、正当な目的であると評価できること、(2)債務者は債権者入社前にはPMの教育業務及びコンサルティング業務に従事した経験がなく、また、当該業務のノウハウを持っておらず、退職後二年間債権者において身につけたPMの前記業務を行うことを制限することには合理的理由があり、債務者の職業選択の自由を不当に制限する結果になっているとまでは言い難いこと、(3)競業禁止期間は債権者退職後二年間であり、同業他社も同様の規定を設けており、期間が長期間で債務者に酷にすぎるとまでは言い難いこと、(4)営業・勧誘活動を行ってはならない対象となる顧客は、これまで債権者の研修を受けるなど既に取引関係が形成されている会社を指し、そうだとすると、対象範囲が余りに広すぎるとはいえないこと、(5)債務者が債権者から支給された報酬の一部には退職後の競業禁止に対する代償も含まれているといえることなどを総合的に考慮すると、本件競業禁止条項は、労働者の職業選択の自由を不当に制約する結果となっているとまではいうことはできず、有効であると解するのが相当である。

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