御器谷法律事務所
最高裁判所 平成18年7月7日判決
いわゆるワラの上からの事実上の養子につき、他の実子が提起した親子関係不存在確認請求訴訟を権利濫用にあたらないとした原審を破棄した事例=権利濫用を認める要件

判旨

 戸籍上の両親以外の第三者である長女が父母とその戸籍上の子である長男との間の実親子関係が存在しないことの確認を求めている場合においては、父母と長男との間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ、判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより長男及びその関係者の被る精神的苦痛、経済的不利益、改めて養子縁組の届出をすることにより長男が父母の嫡出子としての身分を取得する可能性の有無、長女が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的、実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に長女以外に著しい不利益を受ける者の有無等の諸般の事情を考慮し、実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには、当該確認請求は権利の濫用に当たり許されないものというべきである。
(1) 上告人の出生の届出がされた昭和一六年から母が死亡した平成八年までの約五五年間にわたり、上告人と父母との間で実の親子と同様の生活の実体があり、かつ、被上告人は、次女の死亡によりその相続が問題となるまで、上告人が父母の実子であることを否定したことはない。
(2) 判決をもって上告人と父母の実親子関係の不存在が確定されるならば、上告人が受ける精神的苦痛は軽視し得ないものであることが予想され、また、土地建物を中心とする父母の遺産をすべて承継した次女の死亡によりその相続が問題となっていることから、上告人が受ける経済的不利益も軽視し得ないものである可能性が高い。
(3) 父母は、上告人が実の子ではない旨を述べたことはなく、上告人との間で嫡出子としての関係を維持したいと望んでいたことが推認されるのに、父母が死亡した現時点において、上告人が父母との間で養子縁組をして嫡出子としての身分を取得することは不可能である。
(4) 被上告人は、次女の死亡の発見が遅れたことについて憤りを感じたこと、次女の法要の参列者が被上告人に相談なく決めようとされたことなどから、上告人と父母との親子関係を否定するに至ったというのであるが、そのような動機に基づくものであったということは、被上告人が上告人と父母との間の実親子関係を否定する合理的な事情とはいえない。
 以上によれば、上告人と父母との間で長期間にわたり実親子と同様の生活の実体があったこと、父母が既に死亡しており上告人が父母との間で養子縁組をすることがもはや不可能であることを重視せず、また、上告人が受ける精神的苦痛、経済的不利益、被上告人が上告人と父母との実親子関係を否定するに至った動機、目的等を十分検討することなく、被上告人において上記実親子関係の存在しないことの確認を求めることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違反がある。


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