御器谷法律事務所
  
  八王子市下水道工事談合損害賠償請求事件(住民訴訟)−一部認容

東京地方裁判所 平成18年11月24日判決
八王子市の委託を受けて財団法人東京都新都心建設公社が発注した下水道工事の入札談合につき、計約1億9800万円の請求を認容
  1. 争点1−基本合意の存否
     本件慣行にどれほどの拘束性があったのか、本件慣行に反して工事を受注した場合に、どのような制裁的措置がされるのかなどの事情を具体的に明らかにする証拠はなく、結局のところ、本件慣行の内容が、多摩地区において営業活動をする広域総合建設業者内の事実上の慣行であることを超えて、別紙業者一覧表記載の約八〇社により明確に合意されていたこと、あるいは原告らが主張する基本合意が具体的に成立していたことを認めるに足りる証拠はない。
     したがって、争点(1)に関する原告らの主張は、上記の限度で採用することができず、原告らの主首位的請求には理由がない。

  2. 争点2−個別談合の存否
    本件工事1について
     本件工事一については、被告植木組の従業員により、相指名業者との間で、受注価格の低落防止等を図り、被告植木組において予定価格近似の金額で落札できるよう協力する旨の談合が成立し、これにより、被告植木組が本件工事一の落札業者となったと認めるのが相当である。
      したがって、被告植木組は、その従業員が行った談合行為につき、民法七一五条に基づく不法行為責任を負うものと解すべきである。
     (本件工事2〜13略)

  3. 争点3−八王子市における損害の発生
     被告らの個別談合行為によって本件工事一ないし八、一〇、一二及び一三の請負金額が不当につり上げられたものであり、談合がなく公正な競争が確保されていたならばその金額が低額になったものと認められる以上(その額等については後記四で検討する。)、八王子市に損害が発生するものと認めるのが相当である。

  4. 争点4−損害の額
     したがって、本件においては、八王子市において損害が生じたことは認められるものの、損害の性質上、その額を立証することが極めて困難であるから、民訴法二四八条に基づき、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定すべきものである。
     別紙「特定土木工事一覧表」を見ても明らかなとおり、落札率は個別の工事ごとに相当程度の差異がある上、損害額の算定が困難であるにもかかわらず、被告らに対し損害賠償義務を負わせる以上、当該賠償額の算定に当たってはある程度謙抑的に認定することもやむを得ないと考えられるところ、前記一(3)のとおり、平成九年一〇月一日から同一二年九月二七日までの期間における公社発注の特定土木工事七二件における平均落札率が九四・五四%となっている一方で、同年一〇月一日から同一七年一一月一日までの期間における同工事一三九件における平均落札率が八九・八五%となっていることなどに照らすと、八王子市が本件工事一ないし八、一〇、一二及び一三の各談合によって被った損害は、少なくともこれら工事の請負契約における各契約金額の五%に相当する金額であると認めるのが相当である。

  5. 争点5−違法な怠る事実の有無
     地方自治法その他の法令上、独占禁止法第二五条に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権とについて、地方公共団体の長に専ら独占禁止法第二五条に基づく損害賠償請求権の行使を選択して審決の確定まで訴えの提起をしないことができることとする権限を付与する旨の規定は何ら存在しないのであり、平成一四年法律第四号による改正の前後を問わず、地方自治法二四二条及び二四二条の二第一項が地方公共団体の長にそのような権限が付与されていることを前提にしているものとは解し難い。また、被告らの一部につき、不法行為に基づく損害賠償責任が客観的に存在することは前記のとおりであって、被告らの主張はその法的根拠を欠くものであるといわざるを得ない。
     前記四(4)のとおり、被告らの一部は、談合によって八王子市に対して損害を与えており、これらの行為は民法上の不法行為を構成するにもかかわらず、八王子市長は損害賠償請求権を行使しておらず、その不行使は違法というべきであり、本件訴訟における原告らの損害賠償代位請求は前記四(4)の限度で理由があるというべきである。


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