御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成18年12月8日判決(確定)
室内から隅田川花火大会の様子を鑑賞できるマンションを分譲販売した業者が、販売後に自ら眺望を妨げるようなマンションを建設した場合に、室内からの花火の鑑賞を妨げないよう配慮すべき信義則上の義務に違反することを理由として、購入者らから業者に対する慰謝料等の賠償請求が認められた事案

《事案の概要》
H15.5.29   
 乙(マンション分譲業者)→ 甲1甲2 604号室購入(3278万円)
隅田川花火大会の様子を鑑賞できること重視
→接待用に購入
甲3(配管工事等業者で甲ら経営)が部屋を改造工事
H16.5.24  乙、通りを挟んだ向かい側に同程度の高さの別マンションA建築
H17.2
  以降 
 604号室から鑑賞不可の状態になる
甲ら→乙  不法行為による損害賠償(総額約353万円)を求め提訴
鑑賞不可の財産的損害:163万9000円
甲3の改造工事費用:49万3500円
甲1・2の慰謝料:各50万円
弁護士費用:40万円

《争点》
 (1) 乙の営業担当者は、甲らの購入目的を知って販売したか
 (2) 不法行為責任の成否
 (3) 損害論

《裁判所の判断》
  1. 争点(1)→肯定
    本件マンションのパンフレットに花火大会の写真が載せられていたこと、購入検討者の多くが花火大会の話題を持ち出していたこと等を認定し、肯定

  2. 争点(2)→信義則上の義務違反を肯定
     「原告甲1らが604号室からの隅田川花火大会の花火の観望という価値を重視し、これを取引先の接待にも使えると考えて同室を購入し、乙においてもこれを知っていたこと、前記第三、一(2)の隅田川花火大会を巡る状況からみてこれを室内から鑑賞できるということは、取引先の接待という観点からみると少なからぬ価値を有していたと認められることを考慮すると、乙は、原告甲1らに対し、信義則上、604号室からの花火の観望を妨げないよう配慮すべき義務を負っていたと解すべきである。」
     しかるに、乙の行為は、上記の信義則上の義務に違反するものといえる。
     
  3. 争点(3)→損害論として慰謝料のみを肯定
    ア.甲1・2の財産上の損害(否定)
     甲らは、「花火を見ることのできる価値」=購入価格の5%を主張
      → しかし、甲ら提出の「査定報告書」は論拠不十分として排斥

    イ.甲3の財産上の損害(否定)
     花火が見えなくとも改造工事の価値が失われるものではないとして排斥

    ウ.甲1・2の慰謝料(一部肯定)
     「乙においては、本件マンションの北東向きの部屋を購入した者の多くが隅田川花火大会の花火の観望という価値を重視してこれを購入したという事実を知り、あるいは知り得る状況にあったにもかかわらず(この点は、A建築着工後の本件マンション住民に対する説明会の状況を記録した議事録の内容から優に推認できる。)これに対する十分な配慮をした形跡をうかがえず、わずか一年も経ずにその観望を妨げるマンションの工事に自ら着工しているのであり、その後の上記説明会においても議事録の作成が遅れるなど十分に誠意を尽くした対応をしたとまではいえないと認められる。これらの乙の行為態様も慰謝料算定の一事由として考慮すべきである。」
     「しかし、さらに、ひるがえってみると、本件マンションは、前記第三、一(1)のとおり、都心に位置しているのであり、都心における高層ビルの建築が相次いでいるという状況を勘案すると、隅田川花火大会の花火を室内から鑑賞する利益といえども、本件のように売主自身がこれを妨げる行為をしたという特殊な事案を除き、いかなる場合にも法的に保護すべき利益とまではいえないし、Aの建築は、建築基準法上は適法な建築であり、仮に乙がその建築をしなかったとしても、いつか、だれかが同様の規模のマンションを建築するということも考えられるところである。以上の点も慰謝料の算定にあたり十分に考慮されなければならない。」
     以上の諸要素を勘案して、慰謝料として原告甲1に42万円、原告甲2太郎に18万円を認めるのが相当である。

    エ.弁護士費用
     甲1に対し4万2000円、甲2に対し1万8000円を肯定

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