御器谷法律事務所
最高裁判所第三小法廷 平成19年2月27日判決
契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償請求が認められた事例

《事案の概要》
 X(原告・上告人)→ Y(被告・被上告人)→ JCI(ゲーム機等を販売する米国の会社)
 XがAの意向を受けて、ゲームに使用される牌の自動整列装置等の開発・製造を承諾

 「本件は、上告人が、主位的請求として、被上告人との間で商品の継続的な製造、販売に係る契約が成立したにもかかわらず、被上告人が、商品の受領を拒み、代金の一部の支払をしなかったため、上告人において上記契約を解除したところ、これによって商品の開発費、製作費等相当額1億5937万3000円の損害を被ったと主張し、予備的請求として、被上告人には、上記契約の準備段階における信義則上の注意義務違反があり、これによって上記同額の損害を被ったと主張して、被上告人に対し、損害賠償を求める事案である。」

《第1審》 予備的請求のうち1億3219万余の範囲で認容
《第2審》 主位的請求・予備的請求のいずれも棄却
《最高裁》 原判決のうち予備的請求に関する部分につき破棄差戻し
        主位的請求に関する上告を棄却

《理由》
 「上告人は、被上告人との間で本件商品の開発、製造に係る契約が締結されずに開発等を継続することに難色を示していたところ、被上告人は、上告人に本件商品の開発等を継続させるため、JCIから本件商品の具体的な発注を受けていないにもかかわらず、被上告人が上告人との間の契約の当事者になることを前提として、平成9年12月26日ころ、上告人に対し、本件装置200台を発注することを提案し、これを正式に発注する旨を口頭で約し、平成10年1月21日に、本件装置100台を発注する旨等を記載した本件発注書を交付し、同年6月16日に、本件装置を10か月間、毎月30台を発注する旨等の提案をした本件条件提示書を送付するなどし、このため、上告人は、本件装置100台及び専用牌の製造に要する部品を発注し、専用牌を製造するために必要な金型2台を完成させるなど、相応の費用を投じて本件商品の開発、改良等の作業を進め、7月分商品を製造し、これを被上告人に対して納入したというのである。
 これらの事実関係に照らすと、被上告人の上記各行為によって、上告人が、被上告人との間で、本件基本契約又はこれと同様の本件商品の継続的な製造、販売に係る契約が締結されたことについて強い期待を抱いたことには相当の理由があるというべきであり、上告人は、被上告人の上記各行為を信頼して、相応の費用を投じて上記のような開発、製造をしたというべきである
 そうすると、被上告人は、一面で原審が指摘するような立場(注 JCI側からXに対して時期に後れて新たに本件装置の改良を要求したため、YがXと契約を締結できなかったこと等)にあったとしても、JCIから本件商品の具体的な発注を受けていない以上、最終的に被上告人とJCIとの間の契約が締結に至らない可能性が相当程度あるにもかかわらず、上記各行為により、上告人に対し、本件基本契約又は4社契約が締結されることについて過大な期待を抱かせ、本件商品の開発、製造をさせたことは否定できない。上記事実関係の下においては、上告人も、被上告人も、最終的に契約の締結に至らない可能性があることは、当然に予測しておくべきことであったということはできるが、被上告人の上記各行為の内容によれば、これによって上告人が本件商品の開発、製造にまで至ったのは無理からぬことであったというべきであり、被上告人としては、それによって上告人が本件商品の開発、製造にまで至ることを十分認識しながら上記各行為に及んだというべきである。したがって、被上告人には、上告人に対する関係で、契約準備段階における信義則上の注意義務違反があり、被上告人は、これにより上告人に生じた損害を賠償すべき責任を負うというべきである。


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