御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成19年10月3日判決(確定)
マンションの上の階に居住する子供が廊下を走ったり飛び跳ねたりする際の音が、下の階に居住する住民の受忍限度を超えるものとして、子供の父親に対する損害賠償請求が認められた事例

《事案の概要》
H8.7.29 X、本件マンション(3LDK)購入、居住開始
H16.2月ころ Y、妻と子供(当時3、4歳)と居住開始
まもなく、子供が廊下を走ったり、とんだり跳ねたりを繰り返す
3月 X、管理人に相談。管理組合名で一般的な注意の呼びかけ
4.22 X、Y宛に騒音に配慮するよう依頼する手紙を送付
5月 X、Y宅を訪れるも、Y「文句があるなら建物に言ってくれ」
6.22 Y「これ以上は努力することができない」「他の人に訴えるように」などと取り合わず
この頃、X、警察にも相談し、警察官が数回本件マンション来訪
H17.4.8 X→Y 騒音差止め・損害賠償の民事調停申立て
しかし、Yが応ぜず調停不成立
H17.11.17 Yら本件マンションを退去
そこで、XはYに対して240万円の損賠賠償請求(慰謝料200万円、弁護士費用40万円)

(参考)
「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」
 本件建物にあてはめた規制は、 午前6時〜午前8時 45db
                     午前8時〜午後7時 50db
                     午後7時〜翌午前6時 45db

《争点》
 子供が発生させた音が、一般社会生活上Xが受任すべき限度を超えていたか

《裁判所の判断》
 「本件音は、被告の長男(当時3〜4歳)が廊下を走ったり、跳んだり跳ねたりするときに生じた音である。本件マンション二階の床の構造によれば、重量床衝撃音遮断性能(標準重量床衝撃源使用時)は、LH-60程度であり、日本建築学会の建築物の遮音性能基準によれば、集合住宅の3級すなわち遮音性能上やや劣る水準にある上、本件マンションは、3LDKのファミリー向けであり、子供が居住することも予定している。しかし、平成16年4月ころから平成17年11月17日ころまで、ほぼ毎日本件音が原告住戸に及んでおり、その程度は、かなり大きく聞こえるレベルである50〜65db程度のものが多く、午後7時以降、時には深夜にも原告住戸に及ぶことがしばしばあり、本件音が長時間連続して原告住戸に及ぶこともあったのであるから、被告は、本件音が特に夜間及び深夜には原告住戸に及ばないように被告の長男をしつけるなど住まい方を工夫し、誠意のある対応を行うのが当然であり、原告の被告がそのような工夫や対応をとることに対する期待は切実なものであったと理解することができる。そうであるにもかかわらず、被告は、床にマットを敷いたものの、その効果は明らかではなく、それ以外にどのような対策を採ったのかも明らかではなく原告に対しては、これ以上静かにすることはできない、文句があるなら建物に言ってくれと乱暴な口調で突っぱねたり、原告の申入れを取り合おうとしなかったのであり、その対応は極めて不誠実なものであったということができ、そのため、原告は、やむなく訴訟等に備えて騒音計を購入して本件音を測定するほかなくなり、精神的にも悩み、原告の妻には、咽喉頭異常感、食思不振、不眠等の症状も生じたのである。
 以上の諸点、特に被告の住まい方や対応の不誠実さを考慮すると、本件音は、一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えるものであったというべきであり、原告の苦痛を慰謝すべき慰謝料としては、30万円が相当であるというべきである。
 そして、被告は、原告が申し立てた調停による解決も拒み、そのため、原告は、本件訴訟を原告訴訟代理人弁護士に委任せざるを得なくなったものであること、その他本件事案の内容、審理経過、認容額等を考慮すると、本件による弁護士費用として、被告に対して損害賠償を求め得る額は6万円と認めるのが相当である。」


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