御器谷法律事務所
名古屋地方裁判所 平成19年11月30日判決 (確定)
破産者から新株引受権が贈与され、破産管財人による否認権行使時までにこの新株引受権の行使により取得した株式が売却された場合の目的物の価額につき、否認権行使時点における株式の価額をもって算出されると判断した事案

《事案の概要》 
 「本件は、原告管財人が、太郎から被告らへの新株引受権の贈与につき故意否認及び無償否認を理由として否認権を行使し、贈与目的物である新株引受権の価額償還等を求める事案である。」
(原告)りそな銀行
     (1) 貸金請求 A社
          連帯保証債務支払請求 B(A社代表者、C社代表者)
→ 弁論分離の上、請求全部認容判決確定
(原告)H18 B破産管財人に承継
     (2)  詐害行為取消 C社、D、E(Bの妻及び子)

H14.12.31

B→C社、D、E に対して新株引受権の贈与
H16.2.12 C社、D、Eが新株引受権行使
           (各々500万円−720万円を払い込み)
H17.4-7 C社、D、Eが上記引受権行使により取得した株式をすべて売却
           (各々約9890万円−約1億1484万円を取得)
H18.9.12 原告管財人が否認の意思表示

《判旨》 
 新株引受権の経済的価値を肯定し、Bによる贈与行為の詐害性(破産債権者を害すること)を認めた上、故意否認を認定(さらにC社、D、Eを否定)。
 その上で、次のとおり判示。

 「破産法上の否認権行使の結果、否認された行為の目的物の返還が不可能なため、これに代えてその価額を償還すべき場合には、その償還すべき価額は、否認権行使時の目的物の時価をもって算定すべきである(最高裁昭和42年6月22日第一小法廷判決・判例時報495号51頁、最高裁昭和61年4月3日第一小法廷判決・判例時報1198号110頁)。」

 「新株引受権は株式を引き受けることのできる権利であるから、その権利者は、通常、株式取得を目的として新株引受権を保持しているのであり、また、上記判断のとおり、新株引受権の価値は、新株引受権の行使により取得する株式の期待価値であって、≪証拠略≫によれば、その算定には、株式の評価が基礎とされるのであるから、新株引受権と株式との間には経済的連続性があるといえる。
  そして、否認権の制度は、逸失財産の破産財団への復帰及び全破産債権者の公平のためのものであるから、逸失財産の価値を破産財団に復帰させるため、否認権行使の場面においては、新株引受権とその行使によって取得された株式は同一のものとして取り扱うのが相当である。
  本件では、否認権行使時までに本件新株引受権が行使され、それによって被告らは本件株式を取得したのであるから、否認権行使時における本件贈与行為の目的物の価額は、本件株式の価額をもって算出される。

「なお、原告管財人は、請求の趣旨において、本件贈与行為を否認する旨の請求を掲げているが、否認権は形成権であり、その行使によって効果が生じるものと解されているから、判決において、否認権の対象となった行為について、改めて否認する旨の主文を掲げる必要はないと解される。したがって、本件贈与行為を否認する旨の請求は棄却を免れない。」


執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ