御器谷法律事務所
  
  道路公団鋼鉄製橋梁官製談合、背任事件

東京高等裁判所 平成19年12月7日判決
被告人は、日本道路公団の(JH)の理事。独占禁止法上の不当な取引制限の罪の身分なき共謀共同正犯の責任を認め、且つ、背任罪にも該当するとした。

 懲役2年、3年間執行猶予。

判旨のPoints

  1. 共謀共同正犯の成立−独禁法違反
     このように、被告人は、理事として、本件独占禁止法違反行為の対象である鋼橋上部工事の発注を承認する権限を有するJH側の責任者の立場にあった者であり、乙から依頼され、丙から割振表の提示と交付を受けることにより、JHが丙の割り振りを了承しているというお墨付きや権威付けを与え、丙の円滑な受注調整を可能にするとともに、丙の割り振りによる受注調整が行われていることを知りながら、理事説明において、多くの鋼橋上部工事の発注について、それを了承することを繰り返したのである。被告人のこのような行為は、乙の行為とともに、鋼橋上部工事の発注者側の責任者の行動として、本件独占禁止法違反の犯行にとって、極めて重要かつ必要不可欠な行為であったといわざるを得ない。そして、被告人が、本件独占禁止法違反の犯行について、乙、丙及び本件四七社の担当者らと順次に共謀を遂げていたことも十分に認められる。しかも、被告人は、乙と同様に、将来の自分を含むJH職員の再就職先の確保という自分達の利益を図るために、このような行為を行っているのであるから、まさに自らの犯行として、本件独占禁止法違反行為を行ったということができるのである。
     これらの事情に照らすと、被告人は、本件独占禁止法違反の犯行において、その対象工事の発注者側の責任者の一人として、自分達の利益を図るために、極めて重要かつ必要不可欠な役割を果たしているのであるから、被告人は、本件独占禁止法違反の犯行について、単に幇助犯にとどまるのではなく、乙、丙及び本件四七社の担当者らと共謀の上、これを自己の犯罪行為として行った者として、身分なき共謀共同正犯の責任を負うというべきである

  2. 背任罪の成立‐分割発注と一括発注の得失
     これらの事情によれば、本件富士高架橋工事を一括して発注することについては、橋梁の構造条件、現地条件、経済性等の観点から、十分な合理性が認められる。これに対し、本件富士高架橋工事を分割して発注することについては、工事の品質管理や効率性、現場の管理や監督、安全性の確保、事務処理の効率性、コスト削減等の観点から、必ずしも合理性を見出すことはできない。そして、一括発注の計画を分割発注に変更した場合には、図面、設計書、数量表、特記仕様書等の発注に係る関係書類を作成し直す必要があり、これらの書類を設計コンサルタントに外注している関係で、経費も余計に掛かることになり、さらに、設計コンサルタントとの打合せ、積算のやり直し、新たな決裁手続や説明手続等にも、多大な労力を費やすことになり、発注の遅れに繋がるという不合理性も存在する。
     本件富士高架橋工事は、分割発注の場合には、一括発注の場合に比べて、諸経費(共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等)が増大し、その結果、税抜き工事予定価格(有効数字五桁で切り捨てる端数処理をしたもの)が、一括発注の場合には八八億四五〇〇万円であるのに対し、分割発注の場合には合計八八億九二八〇万円(第一工事が六九億二〇八〇万円、第二工事が一九億七二〇〇万円)と少なくとも約四七八〇万円増大することが認められる。
     したがって、被告人は、乙とともに、本件富士高架橋工事の分割発注をJH静岡建設局の担当者らに指示したことによって、JHに対し、少なくとも約四七八〇万円の財産上の損害を加えたということができる。
     本件富士高架橋工事は、連続した第二東名高速道路の建設工事の一部であり、隣接した工区である西工事が既に発注されているのであるから、第一工事のみが発注されて第二工事が発注されないことはあり得ず、第一工事の請負契約が締結された時点において、本件富士高架橋工事の分割発注が確定し、第二工事の発注も確定的になったということができる。してみると、第一工事の請負契約が締結されることによって、第二工事が現実には未だ発注されておらず、第二工事の発注による現実の損失が未だ発生していないとしても、経済的見地においては、その時点において、JHの財産的価値が減少したものと評価することができるのであるから、背任罪が既遂に達したというべきである。
以上のように、被告人は、乙と共謀の上、自己ら、丙及び本件四七社の利益を図る目的で、JHの理事としての任務に背き、本件富士高架橋工事について、分割発注をすべき合理的な理由がなく、分割発注をすれば、一括発注に比べて合計請負代金額が相当多額になることを知りながら、JH静岡建設局の担当者らに対し、同工事を二分割して発注するように指示し、JH静岡建設局長をして、その一部につき工事請負契約を締結させ、JHに対し、少なくとも約四七八〇万円の財産上の損害を加えたのであるから、被告人に背任罪が成立することは明らかである。

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