御器谷法律事務所
最高裁判所 平成20年1月24日判決
遺留分権利者がする価額弁償請求の遅延損害金支払の始期は?

○事案の概要
・H9.11.19−X:本訴提起= 遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記等請求
・H15.8.5−Y:第一審弁準= 価額弁償の意思表示
・H16.7.16−X:訴の交換的変更= 価額弁償の請求+H8.2.9(没時)からの遅延損害金
・第一審−遅延損害金は、H8.8.19(遺留分請求日の翌日)から
・原審−遅延損害金は、判決確定日の翌日から

○最判−判旨:遅延損害金は、訴の変更の翌日(H16.7.17)から
(1)受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け、遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には、当該受遺者は目的物の返還義務を免れ、他方、当該遺留分権利者は、受遺者に対し、弁償すべき価額に相当する金銭の支払を求める権利を取得すると解される(前掲最高裁昭和54年7月10日第三小法廷判決、前掲最高裁平成9年2月15日第三小法廷判決参照)。また、上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても、遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには、遺留分権利者は、受遺者に対し、遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし、それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最高裁昭和50年(オ)第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁、前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。そして、上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には、当該遺留分権利者は、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い、これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当である。したがって、受遺者は、遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で、遺留分権利者に対し、適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり、同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決参照)、同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。そうすると、民法104条1条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は、上記の通り遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し、かつ、受遺者に対し弁償金の支払を請求した日の翌日ということになる。
(2)これを本件についてみると、前期事実関係等によれば、遺留分権利者である上告人らは、被上告人らがそれぞれ価額弁償をする旨の意思表示をした後である平成16年7月16日の第一審口頭弁論期日において、訴えを交換的に変更して価額弁償請求権に基づく金員の支払を求めることとしたのであり、この訴えの変更により、被上告人らに対し、価額弁償請求権を確定的に取得し、かつ、弁償金の支払を請求したものというべきである。そうすると、上告人らは、被広告人らに対し、上記価額弁償請求権について、訴えの変更をした日の翌日である同月17日から支払済みまでの遅延損害金の支払を請求することができる。


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