御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成20年2月13日決定
請負契約の注文主と、注文主の工場で作業していた請負人の従業員との間に実質的な使用従属関係を認定して、請負人の従業員に対しての注文者の安全配慮義務を認め、これを根拠に損害賠償を認めた例

《事案の概要》

乙2の工場の検蓋職場において、高さ90cm足場面積40cm四方の作業台の上に立ってライン上を流れる缶の蓋を検査する作業に従事中、作業台から転落し工場床に頭部を強打し、約3か月後に死亡した。

(原告の請求)
Aの法定相続人(父母)である甲1・甲2が、以下を請求
(1)
乙1・乙2→ 7000万円(安全配慮義務違反による債務不履行、不法行為)
(2)
乙3(乙1の代取)・乙4(乙1の監査役−実質的経営者。弁護士)
連帯して2500万円(不法行為、取締役の第三者責任[会社法429])

《主な争点》
  乙2が信義則上の安全配慮義務を負うか

《裁判所の判断》
(2)については、棄却
(1)につき、 甲1との関係では、2637万6998円の限度で認容。
甲2との関係では、2534万9453円の限度で認容。
乙1の安全配慮義務の点につき、以下のように判示し肯定
「ところで、安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係に付随義務として、信義則上、認められるものである。そして、注文者と請負人との間における請負という契約の形式をとりながら、注文者が単に仕事の結果を享受するにとどまらず、請負人の雇用する労働者から実質的に雇用契約に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていると認められる場合、すなわち、注文者の供給する設備、器具等を用いて、注文者の指示のもとに労務の提供を行うなど、注文者と請負人の雇用する労働者との間に実質的に使用従属の関係が生じていると認められる場合には、その間に雇用契約が存在しなくとも、注文者と請負人との請負契約及び請負人とその従業員との雇用契約を媒介として間接的に成立した法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、注文者は、当該労働者に対し、使用者が負う安全配慮義務と同様の安全配慮義務を負うものと解するのが相当である。
 しかるに、上記認定のとおり、[(1)]本件検蓋作業は、乙2の工場内の、乙2が所有する機械・設備が設置された場所で行われ、[(2)]作業の内容も、乙2が所有するナンバー3ラインのライン上を流れる缶蓋の検査であったことに加え、[(3)]作業台も乙2の所有物であったことからすれば、注文者の供給する設備、器具等を用いて作業をしていたということができる。
 また、[(4)]乙2のBは、作業台を準備した上で、乙1のCに対し、本件検蓋作業の内容、手順などを詳細に説明しており、これを踏まえて、乙1のCが乙1の従業員に対し、Bの説明通りに指示を与えていたこと、[(5)]本件検蓋作業のラインの稼動を管理していたのは、乙1ではなく乙2であり、乙2がそのラインを止めたとき、乙1の従業員は、ラインの近くで待機していたことは上記認定事実のとおりであって、これらの事実に照らすと、乙1の従業員は、実質的には乙2の指示のもとに労務の提供を行っていたと評価するのが相当である。
 以上によれば、乙2と乙1の従業員との間には、実質的に使用従属の関係が生じているものと認められるから、乙2は、乙1の従業員に対し、信義則上、安全配慮義務を負う。
 その具体的内容については、乙1の場合と同様であるところ、乙2は、転落防止の措置が施されていない本件作業台を一部に使用させたものであるから、安全配慮義務に違反したものというべきである。したがって、乙2は、甲らに対し、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。また、上記義務違反は乙2の不法行為にもあたるので、不法行為に基づく損害賠償責任も負う。」

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