御器谷法律事務所
最高裁第1小法廷 平成20年2月28日判決(破棄差戻し)
本件保険金請求権の履行期が合意によって延期されたと判断された事案

《事案の概要》
平成14年8月10日から11日の間
上告人の契約車両が盗難されたため、被害届提出、保険金請求手続
平成14年11月5日
被上告人(保険会社)代理人が「協力依頼書」を上告人に送付
【内容】本件保険金請求についてはなお調査中であり、その調査に上告人の協力を求める旨記載
平成14年12月11日
被上告人(保険会社)代理人が「免責通知書」を上告人に送付し、保険金支払い拒絶
【内容】上告人の調査への協力には感謝するが、調査の結果、本件保険金請求には応じられないとの結論に達した旨記載
平成16年11月26日
上告人が本件訴訟提起

《保険約款》
 本件保険契約に適用される普通保険約款の第6章一般条項には、次のような各条項がある。
20条2項(要旨、保険金請求手続)
被保険者が車両保険金の支払を請求する場合は、事故発生の時の翌日から60日以内又は保険会社が書面で承認した猶予期間内に、保険証券に添えて保険金の請求書等の書類又は証拠を保険会社に提出しなければならない。
21条(保険金支払条項)
「当会社は、被保険者が前条第2項の手続をした日からその日を含めて30日以内に保険金を支払います。ただし、当会社がこの期間内に必要な調査を終えることができない場合は、これを終えた後、遅滞なく保険金を支払います。」
24条(本件消滅時効)
「保険金請求権は、次の時の翌日から起算して2年を経過した場合は、時効によって消滅します。
・(省略)
・第20条第2項に定める手続が行われた場合には、当会社が同項の書類または証拠を受領した時の翌日から起算して30日を経過した時 

《原審》
 平成14年8月10日+30日+2年で消滅時効完成

《判旨》 
 「保険金支払条項による履行期は、同条項のただし書にかかわらず、保険金請求手続が行われた日からその日を含めて30日を経過した日に到来すると解すべきである(最高裁平成5年(オ)第1858号同9年3月25日第3小法廷判決・民集51巻3号1565頁参照)。」

「(中略)本件協力依頼書の送付から本件免責通知書の送付までの間は、被上告人が保険金を支払うことは考えられないし、上告人も、調査に協力してその結果を待っていたものと解されるので、訴訟を提起するなどして本件保険金請求権を行使することは考えられない。そうすると、被上告人の代理人による本件協力依頼書の送付行為は、上告人に対し、調査への協力を求めるとともに、調査結果が出るまでは保険金の支払ができないことについて了承を求めるもの、すなわち、保険金支払条項に基づく履行期を調査結果が出るまで延期することを求めるものであり、上告人は、調査に協力することにより、これに応じたものと解するのが相当である。したがって、本件保険金請求権の履行期は、合意によって、本件免責通知書が上告人に到達した同月12日まで延期されたものというべきである。そして、本件保険契約に適用される前記普通保険約款によれば、本件消滅時効の起算点は、保険金支払条項に基づく履行期の翌日とされているものと解されるところ、その履行期が同月12日まで延期されたのであるから、本件消滅時効の起算点は翌13日となる。」


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