御器谷法律事務所
最高裁判所 平成20年3月22日判決
高速道路でキツネとの衝突を避けようとした運転者が自損事故を起こした場合、当該高速道路に小動物の侵入防止対策が講じられていなかったからといって上記道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえないとされた事例

Aは、北海道縦貫自動車道(道央自動車道)において、普通乗用自動車を運転中、飛び出してきたキツネとの衝突を避けようと急ハンドルを切り、同車は、中央分離帯に衝突し、車道上に停止したところ、後続車に衝突され、これにより、Aは死亡しました(以下、この自損事故を「本件事故」といい、本件事故現場付近の道路を「本件道路」という。)。
本件は、Aの相続人であるX(被上告人)らが、本件高速道路の管理者であった日本道路公団の承継人であるY(上告人・東日本高速道路株式会社)に対し、キツネの侵入防止措置が不十分であった点で、本件道路には国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵があったと主張して、損害賠償を求めた事案です。

 国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、当該営造物の使用に関連して事故が発生し、被害が生じた場合において、当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、その事故当時における当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである(最高裁昭和42年(オ)第921号同45年8月20日第1小法廷判決・民集24巻9号1268頁、同昭和53年(オ)第76号同年7月4日第3小法廷判決・民集32巻5号809頁参照)。
 前記事実関係によれば、本件道路には有刺鉄線の柵と金網が設置されているものの、有刺鉄線の柵には鉄線相互間に20pの間隔があり、金網の棚と地面との間には約10pの透き間があったため、このような柵を通り抜けることができるキツネ等の小動物が本件道路に侵入することを防止することはできなかったということができる。しかし、キツネ等の小動物が本件道路に侵入したとしても、走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することができるものというべきである。本件事故以前に、本件区間においては、道路に侵入したキツネが走行中の自動車に接触して死ぬ事故が年間数十件も発生していながら、その事故に起因して自動車の運転者等が死傷するような事故が発生していたことはうかがわれず、北海道縦貫自動車道函館名寄線の全体を通じても、道路に侵入したキツネとの衝突を避けようとしたことに起因する死亡事故は平成6年に1件あったにとどまることからも明らかである。
 これに対し、本件資料に示されていたような対策が全国や北海道内高速道路において広く採られていたという事情はうかがわれないし、そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり、加えて、前記事実関係によれば、本件道路には、動物注意の標識が設置されていたというのであって、自動車の運転者に対しては、道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができる。
 これらの事情を総合すると、上記のような対策が講じられていなかったからといって、本件道路が通常有すべき安全性を欠いていたということはできず、本件道路に設置又は管理の瑕疵があったとみることはできない。

結論:上告棄却

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