御器谷法律事務所
東京高等裁判所 平成20年5月22日判決(上告)
理事の退任の意思表示につき錯誤無効を認め、この理事による新理事選任決議の無効確認請求等が認められた事案

《事案の概要》
. XY2間で覚書作成(Y2がXの負債を債務引受し、銀行借入に関する債務保証30億円超につきXを免責する)
H10.11.2 X(原告・控訴人)ら5名がY1法人の理事を退任、
同時にY2、3を理事に選任する決議に賛成
H10.11.2/H10.12.25 Y2を理事長に選任

「 理事の変更によって、Xらが当時Y1のために負担していた連帯保証債務を免れ、代わりにY2を中心とする新理事らがY1のために連帯保証債務を負担するという動機を表示してされたものであったにもかかわらず、結局Xらは連帯保証債務を免れていないので、本件退任及び本件理事選任決議はいずれも錯誤により無効であり、その結果、上記新理事らによって構成されたY1の理事会におけるY2をY1の理事長に選任する旨の決議もまた無効であると主張して、
(1)Y1に対して、XらがY1の理事であることの確認、X1については、これに加えて、同人がY1の理事長であることの確認、
(2)Y1に対して、Y2及びY3がいずれもY1の理事でないことの確認、
(3)Yらに対して、本件理事選任決議及び本件各理事長選任決議がいずれも無効であることの確認を求めた事案である。              」

《主文》 原判決を変更して控訴人の訴え一部認容 
1. XらとY1(学校法人)との間において、Y2及びY3がいずれもY1の理事でないことを確認する。
2. XらとYらとの間において、平成10年11月2日に開催されたY1の理事会における、Y1の寄附行為6条1項3号に基づき同日付けでY2及びY3をY1の理事に選任する決議が無効であることを確認する。
(主文省略)

《判旨》
1. 退任の意思表示無効 
「 Xら従前の理事全員が本件退任の意志表示を行った動機は、前記のようなA学院側の義務を履行すると共に、本件覚書により、XらがY1の理事を辞任すれば、Y2が、自ら又は協力してくれる第三者の資力、信用力により、それまでXら従前の理事全員及びA学院が負っていたY1を主債務者とする金融機関に対する債務の連帯保証債務(30億円を超える金額)を免れさせることを約定したことにある。ところが、実際には、それまでXら従前の理事全員及びA学院が負っていたY1を主債務者とする金融機関に対する債務の連帯保証債務を免れさせることを、債権者である金融機関に承諾させるような資力、信用力をY2自身は持たず、そのような資力、信用力のある第三者の協力を確保することもしていないこと(仲介者Bの人脈で理事となったCから、約30億円のY1の債務をCが肩代わりする旨の申出があったが、Y2は、CがY1経営の実権を取り上げようとしているものと考えてこれを断り、仲介者BがCとグルになってY1を乗っ取ろうとしていると、再三仲介者Bを非難し、仲介者Bは理事を辞任することとなった。)は前記認定のとおりであり、Y2には、従前の理事及びA学院の連帯保証債務を免れさせる力量がなかったものであり、Xら従前の理事全員が本件退任の意志表示を行った動機には錯誤があったと認められる。
 仮にY2がそのような連帯保証債務の免責を実現できないことを予め認識していれば、Xら従前の理事は本件退任の意志表示をしなかったはずで、連帯保証債務の額から考えて、一般人も同様の立場にあったならば、そのような意思表示はしなかったものと認められる。             」
「 以上から、Xらの本件退任の意志表示は、錯誤により無効であると認められる。(さらにXらの重過失を否定)                              
 もっとも、Y1の寄附行為には、役員の任期は3年と定められているから、本件退任が錯誤により無効であったとしても、現時点において、Xらの理事の任期が既に満了していることは明らかである。           」 
 として、Xらの地位確認請求は棄却。

 補足:理事会の決議無効確認を求める本件訴えの確認の利益を肯定
+Xらの原告適格肯定(∵ (1)後任の理事選任まで理事として職務を行う義務と権限がある、(2)利害関係人として仮理事の選任を所轄庁に請求することができる)

2 .新理事選任決議無効
 また、「Xら従前の理事全員の賛成の意思表示により成立した本件理事選任決議及びその他の新たな理事の選任決議は、錯誤により無効である」として、上記主文のとおり判決

 補足:新理事が過去に行った司法上の契約(取引行為、教職員の雇用)等については、相手方を民法109条の表見代理の準用等により保護、効力を否定しようとする相手方に対してはY1の追認により対応できる。校長の選任も私法上の契約と解され、校長が行った入学の許可等の行為に瑕疵はない


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