御器谷法律事務所
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月24日判決(破棄差戻)
詐欺被害者らが得た仮装配当金が損益相殺等の対象とならないと判断された事案

《事案の概要》
 「本件は、上告人らが、被上告人によりアメリカ合衆国財務省証券(米国債)の購入資金名下に金員を騙取されたと主張して、被上告人に対し、不法行為に基づく損害賠償として、騙取された金員及び弁護士費用相当額並びに遅延損害金の支払を求める事案である。」
 「被上告人は、平成11年1月ころから、上告人らに対し、被上告人を介して米国債を購入すれば高額の配当金を得ることができるなどと架空の事実を繰り返し申し向け、その旨誤信させ、その購入資金として、平成12年8月から平成15年6月までの間、上告人Aに合計1400万円、上告人Bに合計600万円、上告人Cに200万円をそれぞれ支払わせて、これらを騙取した。
 被上告人は、事実は本件各騙取金で米国債を購入していないにもかかわらず、あたかもこれを購入して配当金を得たかのように装い、平成12年9月から平成15年9月までの間、上記配当金名下に、上告人Aに合計140万8792円、上告人Bに合計42万0021円、上告人Cに合計14万5000円をそれぞれ交付した(本件各仮装配当金)。
 被上告人は、本件詐欺等の事実で逮捕、起訴され、平成18年1月26日、神戸地方裁判所において、詐欺罪で懲役6年の判決を受けた(判決確定)。  

《争点》
 本件各仮装配当金が損益相殺の対象となるかどうか?

《判旨》
 「社会の倫理、道徳に反する醜悪な行為(以下「反倫理的行為」という。)に該当する不法行為の被害者が、これによって損害を被るとともに、当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には、同利益については、加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく、被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損害相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも許されないものというべきである(最高裁平成19年(受)第569号同20年6月10日第3小法廷判決参照)。
 前記事実関係によれば、本件詐欺が反倫理的行為に該当することは明らかであるところ、被上告人は、真実は本件各騙取金で米国債を購入していないにもかかわらず、あたかもこれを購入して配当金を得たかのように装い、上告人らに対し本件各仮装配当金を交付したというのであるから、本件各仮装配当金の交付は、専ら、上告人らをして被上告人が米国債を購入しているものと誤信させることにより、本件詐欺を実行し、その発覚を防ぐための手段にほかならないというべきである。
 そうすると、本件各仮装配当金の交付によって上告人らが得た利益は、不法原因給付によって生じたものというべきであり、本件損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として本件各騙取金の額から本件各仮装配当金の額を控除することは許されないものというべきである。これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」


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