御器谷法律事務所
奈良地方裁判所 平成20年11月19日判決
所属弁護士会及び日弁連が、弁護人の依頼者からの着手金等の詐欺、横領については、損害賠償責任がないとされた事例

 甲らが乙1弁護士会所属の元弁護士であった丙に着手金等名下に金員を騙取され、また、預り金を着服されて被害を被った。
 そこで、甲らが、乙1及び乙2(日本弁護士連合会)が、丙に対する適切な指導・監督・懲戒権の行使あるいは、丙の非行を公表しておれば、甲らは被害を負うことはなかったとして、乙1及び乙2に対して損害賠償を求めた事案である。

(1) 争点(1)(被告弁護士会の過失の有無)について
ア 被告弁護士会の弁護士に対する指導監督権の内容について
弁護士法上、弁護士会は、弁護士の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、弁護士の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とするものと定められている(同法31条1項。なお、平成14年4月1日施行に係る平成13年法律第41号による改正により、本項の「弁護士」は「弁護士及び弁護士法人」に改められている。)。しかし、そこにいう「指導、連絡及び監督」の意味については、弁護士の弁護権ないしその職務の高度の独立性、職務上知り得た事実についての守秘義務(弁護士法23条、刑法134条1項)に照らすと、専ら、所属弁護士の具体的な業務執行や事件処理にわたらない範囲での研修や研究等の一般的な指導監督をすることができるにとどまり、受任事件の処理に関して個別具体的に指導監督することは、明らかに違法な弁護活動、実質的に弁護権を放棄したと認められる行為、あるいは職業的専門家である弁護士及び弁護士法人としての良識から著しく逸脱した行為が存在するなどして、弁護士会の指導監督による是正が特に必要な場合等、特段の事情が存在する場合のほかは、許されないものと解するのが相当である。

(2) 争点(2)(被告日弁連の過失の有無)について
 原告らは、被告日弁連が弁護士に対し、上記第2の4(1)ア(1)ないし(5)記載の事項について指導徹底する義務があったのに、これを怠ったと主張する。
 しかし、弁護士の行いうる法律事務(弁護士法3条)には、法律事務を処理するのに必要な金銭の管理を行うことも当然含まれると解されること、前記のとおり、弁護士会の弁護士に対する監督のうち、事件処理の内容にわたる事項については、指導監督にも一定の制約があること、まして、原告らが主張するような弁護士事務所に対する立入調査を行い、個別口座の開示を求めることなどは、法令等の規定もないのに、弁護士に対する指導監督権の行使として行いうるものではないことなどに照らせば、被告日弁連につき、原告らの主張するような指導ないし監督を行う義務があったということはできない。したがって、原告らの被告日弁連に対する請求には理由がない。


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