御器谷法律事務所
大阪高等裁判所 平成20年11月28日判決(上告受理申立て不受)
相続による共有株式の決権行使について、協議がなされていないため効力がなく、あるいは権利の濫用に当たると判断された事案

《事案の概要・争点》 
 平成19年10月29日開催の定時株主総会において、会社が、遺産分割未了の準共有株式について、これらを有する原告ら:被控訴人を権利行使者とする議決権行使を認めなかったことについて、原告ら:被控訴人が会社に対して、次の各請求をした事案
. 第1審 第2審
主位的請求 (各議案の可決/否決の事実確認) ×(却下) ×(却下)
予備的請求1(決議の不存在確認) ×(棄却)
予備的請求2(決議の取消) ○(認容) ×(棄却)

《株式の保有状況》 
Y株式会社(同族会社):控訴人
発行済株式総数:3万株
固有の
持ち分
本件株式 妻の株式
創業者 H18.6死亡 遺言なし
  :法定相続
9700株
(本件株式)
創業者の妻 H18.8死亡 遺言あり
  :被控訴人らに均等相続
1/2 2500株
(長女・三女グループ)
長女 原告:被控訴人 1250株 3/8 1250株
三女 原告:被控訴人 1750株 3/8 1250株
(次女グループ)
次女 5700株 1/8
次女の夫(創業者夫妻の養子)
(後継経営者候補)
7100株 1/8
次女夫妻の子 2000株

《条文》会社法106条
「株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、当額株式についての権利を行使する者1人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。」

《判旨》
「被控訴人三女において本件株式について権利行使者として単独で議決権行使した場合、控訴人の発行済み株式3万株は、被控訴人ら側において1万5200株、次女の夫(創業者夫妻の養子)ら側において1万4800株となって、被控訴人ら側が過半数を占めることになる。」

「株式会社の株式の所有者が死亡し複数の相続人がこれを承継した場合、その株式は、共同相続人の準共有となる(民法898条)ところ、共同相続人が共有株式の権利を行使するについては、共有者の中から権利行使者を指定しその旨会社に通知しなければならない(会社法106条)。この場合、仮に準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者の一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能になるのみならず、ひいては会社の運営に支障を来すおそれがあるので、こうした事態を避けるため、同株式の権利行使者を指定するに当たっては、準共有持分に従いその過半数をもってこれを決することができるとされている(最高裁平成5年(オ)第1939号同9年1月28日第三小法廷判決・集民181号83頁、最高裁平成10年(オ)第866号同11年12月14日第三小法廷判決・集民195号715頁参照)。もっとも、一方で、こうした共同相続人による株式の準共有状態は、共同相続人間において遺産分割協議や家庭裁判所での調停が成立するまでの、あるいはこれが成立しない場合でも早晩なされる遺産分割審判が確定するまでの、一時的ないし暫定的状態にすぎないのであるから、その間における権利行使者の指定及びこれに基づく議決権の行使には、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた制度の趣旨を濫用あるいは悪用するものであってはならないというべきである。
 そうとすれば、共同相続人間の権利行使者の指定は、最終的には準共有持分に従ってその過半数で決するとしても、上記のとおり準共有が暫定的状態であることにかんがみ、またその間における議決権行使の性質上、共同相続人間で事前に議案内容の重要度に応じしかるべき協議をすることが必要であって、この協議を全く行わずに権利行使者を指定するなど、権利行使の手続の過程でその権利を濫用した場合には、当該権利行使者の指定ないし議決権の行使は権利の濫用として許されないものと解するのが相当である。」

「これらの事実を総合すると、被控訴人らは、平成18年の創業者と創業者の妻の死亡を契機として本件株式が準共有の状態となり、これが遺産分割が終了するまでの暫定的な事態にもかかわらず、この間に限り、前記のとおり、被控訴人らにおいてわずか400株の差で過半数を占めることとなることを奇貨とし、控訴人の経営を混乱に陥れることを意図し、本件抗告審決定で問題点を指摘されたにもかかわらず、権利行使者の指定について共同相続人間で真摯に協議する意思を持つことなく、単に形式的に協議をしているかのような体裁を整えただけで、実質的には全く協議をしていないまま、いわば問答無用的に権利行使者を指定したと認めるのが相当である。
 そうとすれば、仮に一連の経緯のなかで、被控訴人らと次女の夫(創業者夫妻の養子)、次女との間で協議が一応されたとみる余地があるとしても、前記認定事実によれば、被控訴人らの本件株式についての権利行使者を被控訴人三女とする指定は、法の定める手続を無視すると同様な行為と評価せざるを得ず、もはや権利の濫用であって、許されないものといわざるを得ない。
 そして、前記認定事実によれば、このような指定による権利行使者としての被控訴人の三女の本件議決権行使は、同様に、協議がされていないものとして効力がないか、あるいは権利の濫用であって、いずれにしても許されないものというべきである。
 以上によれば、被控訴人三女は、本件株主総会において、本件株式の議決権を行使することはできないと認めることが相当である。」


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