御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成21年3月31日判決
金利スワップ取引の締結に際して、取引のリスクに関する説明義務違反があったとして、証券会社に対する損害賠償請求が認められた事案         

(事案の概要)
  1. X1、X2はそれぞれ株式会社であるが、証券会社Yの顧客であり、AはYにおけるXらの担当者である。
    Xらは、従前からAを介してデリバティブ取引を行っており、豊富な経験を有していた。

  2. Xらは、Aの提案に応じて、Yとの間でKI/KO取引を行った。
    この取引では、平成14年10月から平成15年8月にかけては利益があがっていたものの、その後1年間の間に損失が発生し、結局、この取引によりX1は約3億円、X2は約2億5千万円の損失をそれぞれ被った。

  3. そのため、Aは、Xらに対する信頼を回復するため、Xらに新たな金利スワップ取引を提案し、これに基づき、Yとの間で本件第一取引が行われた。各取引についての契約を締結するに際しては、AからXらに対して、取引リスクについての説明がなされたが、Yの特別取引検討委員会(STRC)において各取引が承認された際に条件とされていた分析表の交付は行われなかった。

  4. その後、Xらの支払金利が上昇し、本件第一取引において損害が発生することが予測されることとなったことから、その損害をヘッジするために本件第二取引が行われた。

  5. Xらは、本件第一取引においては損害を受けているが、本件第二取引では一定の利益を得ている。

  6. Xらは、主位的請求として、各取引の錯誤無効に基づく不当利得返還請求を、予備的請求として、説明義務違反を理由とする不法行為の損害賠償請求をしている。

(争点)
  1. 錯誤無効
     本件第一取引について、Xらは、取引のリスク把握が容易ではないことを認識し了解していたというべきであって、Aの説明した相場観ないし予測が絶対的なものであり、それを超えるような大幅な時価評価損を計上する可能性があり得ないとまで考えていたとは認められない。したがって、Xらは、本件第一取引の時価評価損リスクについて要素の錯誤に陥っていたとはいえない。
     本件第二取引については、Xらは利益を得ているのであるから、錯誤の成否にかかわらず不当利得返還請求は認められない。

  2. 損害賠償
    (1)不法行為の成否
     「証券会社は、顧客に対して金融商品の取引を勧誘するに際し、顧客が自己責任の下に取引を行うか否かを決定するために必要な当該金融商品の特質、当該顧客の理解力や取引経験等に応じて必要かつ相当な範囲で具体的な説明を行うべき信義則上の義務を負う」
     本件第一取引に際して、Aが本件分析表の交付ないしこれに基づくリスク説明を行わなかったことは、Xらの自己責任に基づく自主的な投資決定の判断にとって前提条件の充足を阻害するものと評価できるため、証券会社の顧客に対する説明義務違反があったといえる。
     本件第二取引については損失が発生していないため不法行為不成立。
    (2)損害額
     本件第一取引と本件第二取引は別個の取引ではあるものの、第二取引は第一取引のリスクをヘッジする目的でされていたことにかんがみると、第一取引の損害額を算定する際には第二取引で得た利益を控除すべきである。
     さらに、Xらの取引経験や、本件第一取引の締結の経緯等を考慮して、3分の2の過失相殺をするのが相当である。

  3. 結論
     X1については4億6295万3782円の支払いを求める限度で、X2については2億3147万6521円の支払いを求める限度で、Xらの予備的請求を認容。

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