御器谷法律事務所
東京高等裁判所 平成22年3月24日判決
有価証券報告書の虚偽記載のために会社が上場廃止となり、株価が下落したことにより株主が蒙った損害賠償を請求した事案

《事案の概要》
「被控訴人は、私立学校教職員共済法に基づく共済制度を運用する法人であり、資金を信託銀行に信託し、信託銀行において、これを資金として控訴人西武鉄道の株式を取得していたところ、株式会社コクド及び控訴人プリンスホテルが保有する控訴人西武鉄道の株式数等について、控訴人西武鉄道の有価証券報告書等に虚偽の記載がされていたため、東京証券取引所における控訴人西武鉄道の株式が上場廃止とされた。
 本件は、被控訴人が、上記虚偽記載が明らかとなった結果、控訴人西武鉄道の株価が下落して信託銀行が損害を被り、この銀行から、控訴人西武鉄道、コクド及び控訴人Y3に対する損害賠償請求権を譲り受けたとして、控訴人西武鉄道と、コクドを吸収合併した控訴人プリンスホテルに対しては、平成17年法律第87号による改正前の商法261条3項、78条2項及び平成18年法律第50号による改正前の民法44条又は共同不法行為に基づき、控訴人Y3に対しては、平成16年法律第97号による改正前の証券取引法24条の4、22条1項及び21条1項1号又は共同不法行為に基づき、1億3655万2126円の損害賠償金及びこれに対する不法行為の日の後である平成16年11月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。」

《判旨》 原判決を取消、損害額を減額。
 1 主位的主張(理由がないと判示)
「 被控訴人は、本件有価証券報告書等に本件虚偽記載がされず、コクドによる控訴人西武鉄道の真実の持株数等が公表されていれば、日本トラスティは本件株式を取得することはなかったから、買入代金全額が控訴人の損害であり、被控訴人が本件株式を売却して得た金額は、損益相殺において考慮されるにすぎないと主張する。」
「 しかし、前記認定の事実に甲24号証(証拠略)を総合すると、上場廃止基準に該当する場合においても、実際に上場廃止とするか否かは東京証券取引所の裁量に委ねられており、本件についても上場廃止とすべきことが明白であったとはいえないことが認められ、控訴人西武鉄道において早期に本件虚偽記載を解消するよう努めていた場合には、上場廃止を避けることも可能であったと考えられる。」
「 日本トラスティは、東京証券取引所の市場第一部に上場され、そこで流通している上場株式としての本件株式を通常の方法で取得したのであり、控訴人西武鉄道の株主構成に特に着目し又はその説明を受けた上で本件株式を購入したとの事情を認めるに足りる証拠はない。加えて、上記のとおり、本件株式は、上場廃止要件に該当するという意味の瑕疵を有していたものの、この瑕疵により本件株式が無価値であったわけではなく、その価値が一部減殺されていたにすぎず、本件訂正・公表までの間、本件瑕疵による影響を受けることなく本件株式を処分することが可能であった。」
「 本件訂正・公表による株価の変動をみる場合、変動前の株価としては、本件訂正・公表の時点に最も近く、他の株価変動要因の影響を受ける可能性が最も小さい株価である本件訂正・公表の日(平成16年10月13日)の終値1081円を用いるのが相当である。」
「 本件訂正・公表後の最安値である11月16日の株価は、上場廃止決定を受けた一時的な市場心理を反映した極端な価格であったものというべきであり、この価格を本件瑕疵の顕在化を反映した西武鉄道株の市場価格とすることは相当ではない。むしろ、上記のような価格の変動を考慮すると、本件瑕疵の顕在化を反映した株価としては、本件訂正・公表の日の翌日である平成16年10月14日から最終取引日である同年12月16日までの終値の平均値である457円を用いるのが相当であり、西武鉄道株の価格は、本件瑕疵が顕在化することにより、1081円から457円まで、少なくとも624円下落したものということができる。」
「 上記のとおり、本件株式の価格は、本件訂正・公表前の1081円から少なくとも624円下落したものといえるから、本件株式の価格のうち、本件瑕疵の評価額が占める割合は、上記下落額624円の本件訂正・公表前の株価1081円に占める比率(下落率)であって、57.7%(624円÷1081円)となる。そうすると、日本トラスティの1株当たりの損害額は896円(1553円×57.7%)であり、日本トラスティは本件株式を11万3000株買い入れたから、損害の合計額は、1億0124万8000円(896円×11万3000株)となる。」

《その他》
 過失相殺を認めず。

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