御器谷法律事務所
青森地方裁判所 平成22年4月16日判決
東北町発注の公共工事に係る指名競争入札において、町長が入札参加者として入札資格を有する建設業者を全く指名しなかった違法性と国家賠償請求訴訟(一部認容)

町長選挙の報復として、指名せず

<判旨>
1. 争点(1)−本件指名回避に係る裁量権の濫用または逸脱の有無
 地方自治法234条1項は、「売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし、同条2項は、「前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」としており、例えば、指名競争入札については、契約の性質又は目的が一般競争入札に適しない場合などに限り、これによることができるものとされている(地方自治法施行令167条)。このような地方自治法等の定めは、普通地方公共団体の締結する契約については、その経費が住民の税金で賄われること等に鑑み、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、価格の有利性を確保し得るという観点から、一般競争入札の方法によるべきことを原則とし、それ以外の方法を例外的なものとして位置付けているものと解することができる。また、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(以下、「適正化法」という。)3条は、公共工事の入札等について、入札の過程の透明性が確保されること、入札に参加しようとする者の間の公正な競争が促進されること等によりその適正化が図られなければならないとし、地方自治法234条6項、同法施行令167条の11第2項、3項、167条の5は、地方公共団体の長は、あらかじめ、指名競争入札に参加する者について、契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他経営の規模及び状況を要件とする資格を定めることができ、その資格を定めたときは、これを公示しなければならないとし、適正化法8条1号、同法施行令7条1項2号、3号は、指名競争入札の参加者の資格についての公表や参加者を指名する場合の基準を定めたときの当該基準の公表を義務付けている。
 このように、地方自治法等の法令が、普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき、機会均等、公正性、透明性、経済性(価格の有利性)の確保を図ろうとしていることからすると、地方公共団体の長が恣意的な指名や指名停止、指名回避をすることは許されず、これらの行為がなされたときは、長に与えられた裁量権の濫用または逸脱として国家賠償法上違法となるものと解するのが相当である。
 平成17年度から平成20年度上半期までの間に被告町長であった元町長は、本件選挙において元町長を支援しなかった原告に対し、その報復として、被告が発注する公共工事に係る指名競争入札において恣意的に指名を行わなかったものというほかない。
 したがって、本件指名回避は、被告町長に与えられた裁量権を濫用し、またはその範囲を逸脱するものであるから、国家賠償法1条1項における違法性を有するものというべきである。

2. 争点(2)−原告の損害の有無及びその額
 その損害額については、平成17年度から平成20年度上半期にかけて被告が指名競争入札の方法により発注した公共工事の発注額に、原告の実績等を考慮した受注率(推定受注率)を乗じ、原告が同期間において発注し得たと予想される推定受注額を算出し、さらに、原告の経営や財務の状況を考慮した利益率(推定利益率)を上記推定受注額に乗じて算出するのが相当である。

3. 原告の推定受注率
 原告の推定受注率を的確に算出することは困難であるといわざるを得ないから、民訴法248条の趣旨及び合併に伴う建設業者数の上記増加倍率、原告の上記等級や旧東北町発注に係る指名競争入札における公共工事の受注実績等の一切の事情を斟酌して、原告の推定受注率は5パーセントであると認めるのが相当である。

4. 原告の推定利益率
 原告の推定利益率を的確に算出することは極めて困難であるから、民訴法248条の趣旨及び本件に表れた一切の事情を斟酌し、さらに、利益率はその他の様々な事情により影響を受け得るものであって、これに基づく損害額については控え目に認定するのが相当であることにも照らし、原告の推定利益率は15パーセントであると認めるのが相当である。

執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ