御器谷法律事務所
東京地方裁判所 平成22年4月28日判決(控訴)

労基法9条の「労働者」該当性
(1)自転車による運送業務を請け負ったバイシクルメッセンジャー
(2)バイシクルメッセンジャーの中から選ばれた営業所長

《事案の概要》
 
 「本件は、被告と「運送請負契約」と題する契約を締結してバイシクルメッセンジャー(以下「メッセンジャー」という。)として稼働し、被告が設置する営業所の所長(以下「所長」という。)でもあった原告が、被告に対し、
 1)原告は労働基準法上の労働者に当たる者であり、被告による原告の所長職の解任及びメッセンジャーに係る解雇通告としての性質を有する無期限の稼働停止通告は無効であると主張して、
  ⅰ) 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、
  ⅱ) 所長職の解任による賃金の減収分 及び
  ⅲ) 稼働停止通告以降の賃金の支払を求め、
 2)被告による上記所長職の解任及び稼働停止通告は不法行為に該当すると主張して、損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年11月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。」
 請求額 118万4116円(賃金請求-減収分)+200万円(損害賠償請求)

《主な争点》
  (1)メッセンジャーの労働者性の有無
  (2)営業所長の労働者性の有無
  
《裁判所の判断》 
(1)メッセンジャーの労働者性の有無
 「労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいい(労働基準法9条)、使用者の指揮監督下の労働という労務提供の形態と賃金の支払という報酬の労務に対する対償性を要素としている。したがって、労働者性の判断は、契約の形式のみによって行うのではなく、契約の形式や内容と併せて、具体的な労務提供関係の実態に照らして使用従属性があるかどうか、具体的な報酬の支払実態に照らして労務対償性があるかどうかによって行うのが相当であると解される。」
 上記のような一般論を述べた上、次のような諸要素について検討
 
1)使用従属性の有無
(ア)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無について
a 稼働日の決定
b 稼働日における営業所への来所
c 稼働日における業務従事の中断、終了
d 個別の配送依頼に対する受諾
(イ)指揮命令等について
a 業務マニュアル
b 研修
c 所属営業所の所長による指示
d 配送業務に関する指揮命令
(ウ)拘束性について
(エ)代替性について

2)報酬の労務対償性の有無

3)事業者性の有無

 「以上を総合すると、[1)]本件契約は請負契約を内容とするものであること、[2)]メッセンジャーの労務提供の実態は、被告から配送業務の遂行に関して、指揮監督を受けているとも、時間的、場所的拘束を受けているともいえず、メッセンジャーが被告から現実的かつ具体的に支配され、被告に従属しているといえる関係は認められないこと、[3)]メッセンジャー報酬の額は、配送業務に従事した時間や配送の具体的内容などの事情と連動して定められるものとなっておらず、いわゆる出来高払方式により定まり、これが支払われていること、[4)]他方、メッセンジャーには個人事業性を裏付ける事実関係が認められることからすると、メッセンジャーは、労働基準法上の労働者に該当するとはいえないというべきである。そして、以上は、メッセンジャーとしての原告についてそのまま当てはまるものであるから、メッセンジャーとしての原告について、労働基準法上の労働者に当たるということはできない。」

(2)営業所長の労働者性の有無
 「以上によれば、所長は、所長業務を行うにつき、被告から指揮命令及び時間的場所的拘束を受けているということができ、労務提供の代替性はその一部についてのみ認められるにとどまり、所長手当は賃金としての性格を有するものと評価することができ、他方、所長につき個人事業者と評価し得る事情はないことからすると、所長は労働基準法上の労働者に当たると解するのが相当である。」

 以上により、所長手当分290万2131円の限度で認容した
                                 以 上



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