御器谷法律事務所
最高裁判所第1小法廷 平成22年9月9日判決
土地の転借人(土地上の建物の所有者)の抵当権者に対して、借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じた場合には通知をする旨の念書を差し入れた土地の所有者兼賃貸人及び賃借人がこの通知を怠った場合に、当該抵当権者からなされた損害賠償請求を認めた事案(過失相殺8割)。

《事案の概要》
建物 転借人(A)所有 ← X銀行抵当権設定

 土地(賃貸人Y1、2保有)→不動産管会社Y3(Y1が代表者)へ賃借

 本件各土地の転借人(A)が本件各土地上に所有する本件建物につき、根抵当権の設定を受けていたX銀行が、本件各土地の所有者兼賃貸人又は賃借人兼転貸人であるYらは、X銀行に差し入れた念書をもって、上記転借人の地代不払などその借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じた場合にはX銀行に通知をし、借地権の保全に努める義務を負う旨を約したにもかかわらず、上記義務を怠ったため、本件各土地の転貸借契約が上記転借人の地代不払を理由に解除され、本件建物が収去されて上記根抵当権が消滅し、被上告人が損害を被ったと主張して、Yら各自に対し、債務不履行等による損害賠償請求権に基づき、1500万円及び遅延損害金の支払を求める事案
 
《事実経過》
平成8年
本件賃貸借・本件転貸借契約(スーパーマーケット用建物所有目的
平成14年7月5日  YらがX銀行に念書差入れ
X銀行が本件建物に根抵当権の設定を受けることをYらが承諾する条項や、「Aの地代不払い、無断転貸など借地権の消滅もしくは変更を来たすようなおそれのある事実の生じた場合またはこのような事実が生じるおそれのある場合は、YらおよびAは貴行に通知するとともに、借地権の保全に努めます。」と記載された条項(本件事前通知条項)を含む
平成14年7月31日
X銀行が本件建物に本件根抵当権を設定
平成17年12月27日
Aが、再生手続開始の決定を受け、地代を支払わなかったため、Y3が本件転貸借契約を解除
平成19年4月下旬
本件建物が収去され、本件根抵当権が消滅

《判旨》 上告棄却
 本件各土地に係るAの借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じた場合は、Yらは、X銀行にこれを通知し、借地権の保全に努める旨が明記されている上、Yらは、事前に本件念書の内容を十分に検討する機会を与えられてこれに署名押印又は記名押印をしたというのであるから、Yらは、本件念書を差し入れるに当たり、本件事前通知条項が、上告会社においてAの地代不払を理由に本件転貸借契約を解除する場合には、上記の地代不払が生じている事実を遅くとも解除の前までにX銀行に通知する義務を負うとの趣旨の条項であることを理解していたものといわざるを得ない。
 そうすると、Yらは、本件念書を差し入れることによって、上記の義務を負
う旨を合意したものであり、その不履行によりX銀行に損害が生じたときは、損害賠償を請求することが信義則に反すると認められる場合は別として、これを賠償する責任を負うというべきである(X銀行の被った損害の額を980万円と認定した上、8割の過失相殺をした原審の判断が相当と判断)。
 

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